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喉で低く唸って、真衣は座席に倒れ込む。
「志之塚さん大丈夫？」
気づいた教師が駆け寄って来ることもある。
誰も、何も分かっていない。
真衣は失神しているのだ。
大好きなアイドルのコンサートで白目を剥く女の子のように。
雪崩を打って押し寄せる神聖な波動を感受して、真衣は歓喜する。
真衣にとって、奉献文とともに繰り広げられる儀式は、もはやミサの一場面などではない。
壇上の神父の声や動作は、白く輝く光に、糸も容易く霞んでしまう。
ミサの度、真衣は見聞き感じることが出来たのだ。
ナザレのイエスという男が、最後の晩餐の席上で弟子たちを前にして行ったことを。
何千年も前の過越の日の出来事が、真衣の眼前に、まるで自分が体験したことのように蘇るのだ。
聖体拝領は信者にしか許されていない。
睡眠を貪っていた信者の子たちが目を覚まし、神父の前に列をなす。
聖別されたパンを恭しく掌に受け、素早く口に押し込む。
その頃には真衣も正気づいて、座席にぐったりともたれたまま、壇上の人々を凝視する。
真衣の目は潤んで光っている。
感動や感激のためではなく、畝るように身の内を過ぎて行った快楽のために。
熱心に聖書を読みミサに参加する真衣は、信者に向けてだけ行われるミサにも出席することが許可されていた。
真衣は足繁くお御堂に通った。
そこでも、真衣は失神するらしい。
しかしまさか恍惚ゆえに失神することがあるなど、列席する信者たちには思いもよらなかっただろう。
彼女たちにとってのミサが、単なる儀式にすぎなかった故に。
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お御堂から戻って来ると、真衣は必ず私に言った。
「ねえ、私が今1番食べたい物が何だか分かる？」と。
勿論分かるわ、真衣。
あなたはキリストの体を食べ、キリストの血を飲みたいのでしょう？
でも、私は答えない。
真衣の�狎擦覆覘疝澣瓩鯡席顕修垢襪里鯣鬚韻襪燭瓠◆屬気◆�何でしょう」と答えるのだ。
私と真衣に、ミサを終えてお御堂から出てきたシスターが、声を掛けて来たことがある。
「志之塚さん、貴女は本当に熱意のある方ですね。
もっと聖書を勉強して、洗礼を受けたらどうかしら。
貴女さえよければ、私から神父様にお願いしてみますよ。
ご両親とも相談してみなさい」
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作者名：真 | 作成日時：2022年9月28日 16時
