なんでも承りますよ〜4〜 (ページ42)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:1,826 hit

42 ページ42

「はい。
1番大きなタルト型が良いそうです」

玄師は予約票を受け取ると、嬉しそうに笑う。

「長井さん、モンブランを全部食べて下さったんですね。
作った甲斐がありました」

「あんなにキレイに食べてもらえたら、モンブランも思い残すことはないでしょう」

玄師は店舗に移動して、レジの隣に置いてあるパソコンで検索を始めた。

「何を調べてるんですか」

横から画面を覗き込みながら真衣が聞く。

「ルバーブをお取り寄せしようと思ってね」

「果物でしたっけ？
ルバーブって」

「いや。
蕗のように、葉っぱの下の軸部分を食べる植物です。
さて、どこから取り寄せるか。
できれば北の方が良いな」

「どうしてですか」

画面に集中したまま、玄師が答える。

「ルバーブは原産地がシベリアなんですよ。
産地が近ければ近いほど気候が似るから、元の味に近づけやすい。
国内だと、北海道か信州かな。
海外からのお取り寄せより安いしね」

「安いのは嬉しいです」

「うん。
そう言うと思ってました」

玄師は注文ボタンをクリックして、満足気に頷いた。

「沢山注文したから、コンフィチュールやシャーベットも作りましょう」

「働き者ですね、玄師さん」

「うん。
じゃあ、今はする事がないから出掛けてきます」

「偶には追加のお菓子も出しましょうよ」

店のお菓子は朝1番に並べた分だけの売り切りで、追加が並ぶ事はない。

売り切れてしまえば、真衣の仕事はあらかたなくなる。

働き者の真衣の声は聞こえないフリをして、玄師は外へ出て行った。

・

・

・

・

10日後、信州から届いたルバーブの大きさに真衣は唸った。

フレッシュルバーブがぎっしりと入っている段ボール箱は、見た目よりずっと重かった。

1人で持ち上げられず、玄師が戻るまで入口の側に置いておくしかないと思ったが「こんにちは」と、昼過ぎに長井愛美がやって来た。

真っ直ぐショーケースに向かおうとしたが、足元に置いてある段ボールに気付き首を傾げる。

「これ、お届け物ですか？」

「すみません、邪魔ですよね。
今どかしますから」

真衣が駆け寄って、隅に寄せようと一生懸命押したり引いたりしていると、愛美がすいっと段ボール箱を持ち上げた。