なんでも承りますよ〜4〜 (ページ5)

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「ねえ、玄師さん。
王冠をズルして手に入れて、嬉しいでしょうか」

「それは人それぞれだろうけど。
平間さんの息子さんは中学生なんだよね。
もしかしたら、ズルはバレバレになるかもしれないね」

「絶対バレますよ。
そういうのって、態度で伝わりますもん」

玄師は真衣の日頃の鈍さを思って首を傾げた。

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焼き上がりのガレット・デ・ロワの上面にシロップを塗る。

ジュワッという音と甘い香りが、厨房いっぱいに広がる。

「綿菓子みたいな香り。
それに、焼き色にツヤが出て美味しそう」

「シロップがある程度乾いたら出来上がり。
温かいうちに食べてみましょう」

「はい！」

真衣はいそいそと小皿とフォークを準備して、ワクワクを抑え切れず小さく左右に揺れている。

玄師はそれを微笑ましく見ながらパイにナイフを入れた。

「バニラとクリームの良い香り！
たまりません」

自分の小皿のガレット・デ・ロワにフォークを突き刺して、ふと真衣は真顔になった。

「玄師さん。
これ、当たりじゃないですか？」

「気付きましたか。
小豆が切り口から見えていますか？」

「そうじゃなくて。
玄師さん、物凄く期待した目で見てます。
〝きっと大喜びするだろう〟って考えませんでした？」

玄師は溜息を吐いた。

「真衣さんの言った通りですね。
態度でバレるんだ。
これは困りましたね」

腕組みして考え込んだ玄師を放ったまま、真衣はいそいそと試食した。

「美味しい！
ほかほかのパイの中にとろっとしたクリーム。
温かいアイスクリームみたいに口の中でとろけます」

「クレーム・フランジパーヌは、滑らかさが命だからね」

真衣の好評に、玄師も悩みを一時中断してお菓子に手を伸ばした。

「アーモンド、卵、バター。
素材の味はそれぞれ知っているはずなのに、どの味も単体では見つけ出せないんです。
全部が1つの味になって、口の中にやってきます」

はぐはぐと食べ進んでいた真衣のケーキの断面から、小豆がころりと転がり出た。

「あ！
当たりの小豆が出ましたよ、玄師さん」

真衣は小豆を摘み上げて玄師に差し出す。