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玄師が手にした紙袋からケーキボックスを取り出し、大嶋の前で開いてみせる。


「おお?
こりゃ良いわ!
何だよ、玄師!
お前知ってたのか?」

「え?
知ってたって、何をですか?」


その時扉を開ける音がして、数人の客が店に入ってきた。

皆、ドレスやフォーマルスーツに身を包んでいる。


「おーぅるあ!
ようこそ!!」


大嶋の大音声に客が驚き、足が止まる。

玄師は微笑み、お菓子の箱を持って厨房に行った。

暫く待つとファーストドリンクのオーダーを済ませた大嶋が厨房に入ってきた。

1人きりで切り盛りしている店なので、客が来た直後の大嶋はフル回転だ。

すぐにドリンクを作り客席へと運ぶ。

料理が何品か出て大嶋の手が空くのを待ち、玄師はケーキを取り出した。


「良い!
良いじゃないか、本当に!!」


大嶋が玄師の背中をバンバン叩く。

玄師は咳き込みながらも、ケーキが壊れないように調理台の隅にそっと置いた。


「もう切ってあるのが有難い!
それに、これは今日のパーティーにぴったりだ」

「今日のパーティーって?」
 
「結婚披露宴さ。
これからの人生を共に刻んでいくっていうセレモニーだ。
うん、良いよ。
かなり良いね」


直接的に褒められて、玄師は満面の笑みを湛えた。

温かい料理をテーブルまで運び終えて戻ってきた大嶋は、目を細めて言う。


「新郎新婦はサンティアゴ・デ・コンポステーラへの旅で知り合ったのさ。
その時に新婦の時計が壊れて、近くにいた新郎に話しかけたのが馴れ初めなんだと」

「時計ですか!」

「そう。
だからさっきは驚いたよ。
お前さんが2人を知ってたのかと思ってな。
でも当人達に聞いてみたら、ハズレだったさ」


いかにも残念といった顔で頷く大嶋に、玄師は頭を下げてみせる。


「ご期待に添え「そんなこたあ、いいのよ!それよりこのケーキの写真、店のブログに上げてもいいか?」はい、ぜ「ありがとう!そうだ、お前も新婚さんを祝ってやれよ!」」


大嶋はバン!と玄師の背を叩く。

玄師はごふっと咳き込んだ。























「ただいま・・・」


帰ってきた玄師を見た真衣は、慌ててショーケースの後ろから飛び出して玄師の肩を支える。


「どうしたんですか、玄師さん!
ボロボロじゃないですか。
何があったんですか?」

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作者名: | 作成日時:2022年7月16日 23時

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