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「美味しかったですけれども!」


蒸し上がった真っ白な団子を12等分する。

枕団子用の6つは丸のまま水に晒し、残り6つは指の腹で真ん中を押し潰したヘソ型にしてから水に放った。


「あの写真も嘘だったじゃないですか!」


団子の成形を終えた玄師が真衣に向き直り、口を開く。


「写真って、何の写真ですか?」


真衣の動きがピタリと止まる。


「えっと、あの・・・その・・・」

「玄師の子供の頃の写真が見たいって言うから、持って来てやったんだよ」

「でもあれ、斑尾さんの高校生の時の写真だったじゃないですか」

「後ろの方に玄師も写ってただろ」

「あんなの小さくて見えません」

「なんだ、俺の写真なら倉庫にあるよ」

「見たいです!」


両手を胸の前で握り締める真衣に笑顔で頷き、玄師は斑尾に視線を移して裏口の扉を指差した。


「へ?」

「取って来て、斑尾」

「なんで俺?」

「俺は忙しいし、真衣さんは場所を知らないでしょ」

「俺だって忙しいぞ。
仕事が・・・」


玄師は美しくニッコリと笑う。


「取って来てくれるよね」


2人のやり取りを興味深々で見ていた真衣は、とぼとぼ出て行く斑尾の背中を見送ってから玄師に言う。


「斑尾さんの扱いが上手ですね」

「伊達に長く一緒にいないよ」


答えながら、冷水に晒していた6個の団子の水を切って小皿に盛り、へそのある団子はガラスの小鉢に入れた。

蒸し器から熱い団子生地を3つ取り出してボウルに入れ、手でついていく。


「さっきのお団子はつかなかったですよね」

「うん。
枕団子は仏様の物だからね。
地方によっては、米粉を練るだけで蒸さない団子もあるそうだ。
真衣さんが食べてみたいだろと思って、今回は蒸しました」


ついた団子を水で冷ましている間に、蓬を擂って濾しておく。

冷めた団子を3つに分けて、1つには紅麹色素を、1つには蓬を混ぜ、最後の1つは着色せずひと口大に丸めた。

形ができたら水で濡らした竹串に上からピンク、白、緑の順に刺していく。


「おい、玄師。
たまには倉庫の掃除をしろ。
埃が酷いぞ」


斑尾が、裏口から1冊のノートを持ってきた。


「そのノート、玄師さんのお爺さんのレシピノートじゃないですか?」

「そう、先代の物です。
ただし、これはレシピじゃなくて日記です」

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作者名: | 作成日時:2022年7月16日 23時

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