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「別にいいです。
玄師さんが帰ったら聞きますから」
「アイツまた放浪してるのか。
帰りを待ってたら何時になるか分からんぜ」
真衣は口の横に人差し指を当ててしばし考え、軽く眉を寄せて答えた。
「別にいいんですけど、仕方ないので聞いてあげます」
「ありがとう・・・って、何で俺がお礼を言うんだ」
「話したかったんでしょう？
さあ、どうぞ、存分に。
伺いますから」
畳み掛ける真衣を納得いかない様子で半眼で見ていたが、斑尾は諦めたように首を振ると説明を始める。
「枕団子っていうのはな、亡くなった人の枕元に供える団子のことだ。
仏式の通夜と葬儀の時に飾る。
上新粉なんかを捏ねて、蒸したり茹でたりして。
数は1つだったり6つだったり49だったり・・・」
「何ですかそれ、随分適当ですね」
真衣は斑尾を強い眼差しで見つめ、真剣な表情で言い募る。
斑尾はポリポリと顎をかきながら、のんびりと答えた。
「そう言われてもな。
地方や宗派でも全然違うから」
「それに、作り方の説明も雑過ぎます」
「俺は菓子職人じゃないからなあ」
「もういいです。
うちのお爺ちゃんのお葬式の時には見ませんでしたし、嘘かもしれませんから」
斑尾は悲しそうな表情を作ってみせる。
「愛しい真衣ちゃんに疑われて俺は悲しいよ。
しくしく。
どうしたら俺のことを信じてくれるんだい」
「その嘘泣きにもなってない嘘泣きを止めてくれたら、少しくらい信用できるかもしれなくもないです」
「真衣ちゃんは厳しいな」
真衣の深い疑念を大して気にする素振りもなく、斑尾はどかっと椅子に腰を下ろす。
そして、バックからノートパソコンを取り出した。
「もう、斑尾さん。
ここで仕事しないで下さいって、いつも言ってるじゃないですか」
「いいだろ、少しくらい。
減るもんじゃないし」
「そうですけど。
今日は何の記事を書いてるんですか」
真衣も斑尾の隣の椅子に座り込むと、ディスプレイを覗き込む。
フードライターの斑尾のパソコンのデスクトップには、整理されぬままのファイルが並んでいた。
そのうちの1つを開きながら、斑尾が答えた。
「雑誌のお花見特集さ」
「お花見ですか！
なら�爐�花見スイーツにどうぞ�瓩辰董△Δ舛僚佞離院璽�も載せてくださいよ」
「残念だが、今回は�牴峺�の歴史�瓩辰討い�小さい記事だ」
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作者名：真 | 作成日時：2022年7月16日 23時
