なんでも承りますよ〜7〜 (ページ33)

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「駄目ってことはないんじゃない？
でも先代が凄く丁寧にお菓子のスケッチをして、レシピを残してるからね。
玄師さんも残したいんじゃない？」

「子供や孫にってこと？」

「そう」

「真衣はどうなのさ」

「どうって何が」

「自分の人生を共に残していきたい人が欲しいと思わないわけ？」

真衣はむっとして唇を突き出した。

「富士峰には関係ないでしょ」

「心配してるんだよ僕は。
喜びも悲しみも分け合える人がいる幸せは、真衣には分からないだろうけど、それはそれはも「鬱陶しい！」」

うっとりした表情で夢見るように語る姿に苛ついた真衣は、富士峰の言葉を遮った。

「ご注文は以上ですか！
では、外までお見送りします！」

真衣は富士峰の背中をぐいぐい押した。

「ちょ、ちょっと待って、タブレット！
僕のタブレット！」

真衣の剣幕から辛うじて逃げ出した富士峰が、玄師の手からタブレットを取り上げた。

タブレットの写真を見ながら絵を描いている途中だった玄師は「おや」と言って顔を上げた。

「すみません玄師さん、ケーキお願いします！」

真衣の鋭い眼力から逃れようと、富士峰は慌てて荷物を引っ掴んで店から飛び出した。

「富士峰くんは、いつも慌ただしいですねえ」

のんびりした玄師の声に気持ちを合わせて落ち着こうと、真衣はイライラを静めるための深呼吸をした。

「富士峰は頭の中までとっ散らかってますから。
それより玄師さん。
スケッチの途中だったのに、ごめんなさい」

「大丈夫ですよ。
もう殆ど終わってましたから。
これだけ描ければ十分です」

ノートを手に立ち上がった玄師にくっついて、真衣も厨房に入る。

「人形は飴で作るんですか？」

「いや、マジパン細工にしようと思います」

「わあ、いいなあ。
私、マジパン大好きです」

「それは良かった。
これから何度か造形の練習をしますから、試食をお願いします」

「勿論、承ります！」

力強い真衣の返事に微笑みながら、玄師はマジパン作りに取り掛かった。

大元になる材料はアーモンドと砂糖。

それに香り付けのローズウォーターだ。

皮付きのアーモンドを熱湯で茹で、ザルに上げる。

指で押さえつけるようにして皮を剥く。

アーモンドをミキサーにかけ、油が出るまで回す。