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「富士峰くんは、誕生日ケーキを注文に来てくれたんだね」




「もういいです」




「そう?
じゃ、気を付けて帰ってね」




「玄師さん!
ここは引き留めてくれる場面じゃないんですか。
なんで2人とも僕をみすみす帰そうとするんですか、僕だって客ですよ。
それともやっぱり、僕と洋子さんの付き合いに反対なんですか!」





勢い良く文句を言った富士峰に対し、2人は冷ややかだ。





「そんなことはないけど。
でも、心底不思議なだけよ」




「俺も同感です。
富士峰くんを支えることが出来る女性がいるとは、驚きです」





富士峰はパッと明るい表情になると、しまいかけた写真を玄師に見せた。





「洋子さんは素晴らしい人なんです。
優しくて美しくて聡明で。
いつも僕のことを見守ってくれる、天使のような人なんです」





玄師は富士峰から写真を受け取って眺めた。





「人柄の良さが表に滲み出ている感じだね」




「そうなんです!
洋子さんの美しさは、そのまま心の美しさなんです。
だから僕は、洋子さんの姿を形にしてほしいんです」




「形にするって、どういうことかな」




「洋子さんに似せた人形を、ケーキに乗せてほしいんです。
勿論、食べられるお菓子で。
とっても美味しいお菓子が良いです。
ケーキは、洋子さんが好きなチョコレートケーキにして下さい。
今度の誕生日パーティー用に、とびきり大きいのを」





玄師が仕事モードの真面目な顔になった。





「人形は1つでいいのかな。
富士峰くんの人形も作って並べる?」




「いえ、そんな。
僕の人形なんて、誰も食べたがりません」




「それもそうだね」




「・・・少しは否定してくれても良いのに」





富士峰は力無く項垂れる。




そんなことには頓着せずに、玄師はまじまじと写真を見つめた。




写真を裏返したり、パタパタとあおいでみたりしながら、じっくり構想を練っているようだ。




富士峰は真衣が淹れ直したお茶を啜りながら、大人しく待った。





「富士峰くん、他にも写真を持ってる?」




「プリントアウトしてないけど、この中に入ってます」






富士峰が見せたiPadの画像ボックスは、洋子の写真で埋め尽くされていた。




前向き、右向き、左向き、後ろ姿。




全方位から撮影した無数の写真。




タブレットを覗き込んだ真衣が、呆れ気味に言う。

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作者名:井原 | 作成日時:2022年11月24日 22時

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