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「心配かけてごめんなさい」



「謝んなくて平気だよ。
でも、何で塾をサボったか聞いてもいいかな」




真斗は居心地悪そうに視線を彷徨わせながら答える。




「何となく、です。
何となく行きたくなくて。
でも何処にも行く所がなくて、ぼうっとしてたんです」



「暑いのに外にいたの?
お友達の家に行こうとか思わなかった?」



「皆んな塾に行ってるし。
それに遊びに行ったら、お母さんに怒られるし」



「怒られるって、何で」




次の言葉を口にするのを、真斗は少し躊躇った。




「僕の家はゲームも漫画も禁止なんです。
だけど、友達の家に行ったらどっちもあるから」



「そんな。
それじゃ、真斗くんはいつもどこで遊んでるの?」



「特に遊びに行ったりはしません。
勉強もあるし、習い事もあるし」



「習い事もしてるの?」



「はい。
英会話とスイミングとピアノと算盤と習字と・・・」



「ちょっと、待って待って。
そんなに沢山習ってたら、いつ休むの?」



「特に休みはありません」



「遊びも休みも無いなんて、そんなに詰め込んだら大変。
おかしくなっちゃうよ」



「そうでもないです。
子供の本分は勉強ですから」



「子供は遊ぶのも仕事だによ」




真斗は力無く笑った。




「真斗くん、真衣さん。
ちょっと来て」




厨房から玄師の声がして、2人は立ち上がった。



厨房を覗くと、調理台の上に鈍く光る銀色の古い機械が置いてあった。



1メートル四方ほどの大きさで、鉄でできた枠だけの箱のような物だ。



側面に大きなハンドルがついていて、鉛筆削りのように刃を回せるようになっている。




「わあ、懐かしい」




感嘆の声を上げた真衣に、真斗が尋ねた。




「コレ何ですか」



「かき氷機なの。
玄師さんのお爺さんがまだお店にいた頃、夏になると近所の子供にかき氷を作らせてくれたんだ」



「作ってみるかい、真斗くん」




玄師はそう言いながら、冷凍庫から大きな氷柱を取り出した。




「でっかい氷!
そんなのどこで買うの?」



「氷の専門店があるんだよ。
今年はかき氷を復活させようかと思って」



「透明で綺麗だね」



「氷屋さんの氷は美味しいよ。
さっそく削ってみよう」




氷柱は機械にぴたりと収まった。



上部にある押さえを、大きなネジでしっかり固定する。

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作者名:井原 | 作成日時:2022年11月24日 22時

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