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「真理亜ちゃんがさ、ダンス教室の先生になるんだって」
「それは凄い。
西宮さんは、教室で1番の実力者ですからね。
今の社交ダンス教室で教えるんですか？」
「それが違うの。
カルチャーセンターでね、サンバダンスを教えるのよ」
「サンバ専門の教室ですか。
珍しいですね」
「それでね、真理亜ちゃんが困っていてねえ。
何とかしてやりたいんだけど」
頬に手を当て溜息を吐く和佳子は、珍しく言葉が少なめだ。
玄師が口を開こうとしたところに、厨房から斑尾太一がひょっこり顔を出した。
「お、和佳子さん。
今日もお綺麗ですね」
「あらやだ。
斑尾くんったら、相変わらず正直なんだから」
斑尾は肩にかけていた重そうなバックを適当に置くと、和佳子の隣に腰を下ろす。
玄師と幼馴染の斑尾は、この店にしょっちゅう入り浸っていて、常連客とも顔馴染みだ。
真衣は2人分のお茶を淹れて運びながら、斑尾にお決まりの苦情を述べる。
「もう、斑尾さん。
裏口から入って来るのは止めて下さいって、いっつも言ってるじゃないですか」
「ああ、そうだっけ。
今度から気をつけるよ」
「毎回そうやって誤魔化すんだから」
真衣は和佳子と玄師の前にお茶を出す。
「真衣ちゃん、俺のお茶は？」
「今から淹れます」
斑尾の何時もながらの図々しい言葉に軽く溜息を吐きながら、真衣はお茶の準備に取り掛かる。
店では丁寧に1杯立ててお茶を淹れるので、少々時間がかかる。
その間に和佳子のお喋りは再開した。
「斑尾くん、サンバを知ってる？」
「社交ダンスのラテンの方ですか？
それとも、ブラジルのサンバダンスの方？」
「どっちも。
真理亜ちゃんがさ、ブラジルのサンバダンスを教えることになったの」
斑尾は玄師に顔を向ける。
「真理亜ちゃんって知り合い？」
「うん。
社交ダンス教室の有望株だよ」
「真理亜ちゃんは凄いのよ。
何度も賞を取ってるんだから。
まだ大学生なんだけどね。
小さい頃から続けてるだけあって、堂に入ってるっていうか、もう素晴らしく美しくて」
「へえ。
それは見てみたいな」
「斑尾くんも1度遊びにいらっしゃいよ。
斑尾くん、ハンサムだから皆んな喜ぶわ」
「それは是非お邪魔しないと。
みなさんに俺の華麗な踊りを見てもらわないとね」
ハンサムと言われた斑尾は謙遜することもなく、和佳子の言葉を受け入れる。
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作者名：井原 | 作成日時：2022年11月24日 22時
