# ページ48
*
彼の手が私の手に覆いかぶさった
さっきまで水を使っていたからか、幾分か体温を失われている冷たい手
宮舘「 ………乗り越えられない壁はないよ、きっとそれはAが乗り越えられないと勘違いしてるだけ。 」
「 ……誰に何を吹き込まれたの？ 」
宮舘「 紫のよく喋る方がうちのグループの同じく紫の方に色々話したみたいで。それで聞いちゃった。 」
あぁ本当に河合くんは口が軽い、そしてそれをペラペラ喋るふっかもどうかしている
だけど、舘様のその言葉に救われたのもまた事実
「 ありがとう、私頑張るね。 」
彼も何度も自分の気持ちを伝えてくれた
それなのにこうやって背中を押してくれる、だから私もそれに答えるようにして前に進もうと思えるんだ
宮舘「 だけどその前に、目の前の俺のことも考えて欲しいな。 」
彼がのそりと動くとふわっと私のことを持ち上げて、そしてベッドルームに連れてかれた
そのまますとんと落とすと、その上にゆっくりと跨る彼
宮舘「 過去に囚われているなら俺が救い出す、俺がAの騎士になりたい。」
言葉ひとつひとつが嬉しくて
それなのに、言葉ひとつひとつが辛く苦しい
宮舘「 今だけは俺の事を見て？ 」
彼の唇がゆっくりと迫ってきた
───
宮舘「 A、すっごい虚無〜って顔してる。 」
終わったあと彼が冷たい水を持ってきてくれて、私に渡してくれる
非力な私のために目の前でキャップを開けてくれるサマはまるで本物のジェントルマン
「 そんなことないよ。舘様の愛情沢山貰えて嬉しかった。 」
宮舘「 うん。いつかその言葉が本心になってくれる事を祈ってるね。 」
彼は何もかも気付いている
それでいて、目を瞑って、そして私の背中を押してくれているんだ
「 ………ありがとう、舘様。 」
好きな人には愛されない
そんな悲しみ、自分が一番分かっているつもりでいた
それなのに、私はまたメンバーの優しさに縋ってそして傷付ける
私は早く前を向かないといけない
これ以上彼らを傷付ける前に、早く
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作者名：FON
| 作成日時：2020年8月8日 11時
