" 漸近線 "

#12 ページ12

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「 優等生くんも変わっちゃったね 〜 」


阿部「 変わらせたのは誰だよ ｡ 」










お前のせいで俺は変わってしまった
"逃げ" を覚えてしまった

お前は ､ その責任が取れるのかよ
こんなに毎日真面目に生きてきたのに ､ 今までの積み重ねが全部パーになってしまう気がして ､ それでも苛立ち共に覚えた感情は安堵

あまりにも理解しがたい二律背反













「 んふふ ､ 亮平くんが無理しないように手助けしてあげただけだよ 〜 ｡ 笑 」












それなのに彼女は嬉しそうに笑うだけ

その言葉の意味も ､ 口角を上げる理由も ､ 全部全部意味が分からない
理解が出来ない











今は一時間目の授業中

静まり返った廊下で ､ ただ二人きり

A先生は ､ 俺に近付くと耳元で囁いた

























「 放課後 ､ 理科室へおいでよ ｡ 」




























そして ､ 妖艶に微笑む


彼女は天使だ
それでいて ､ 悪魔


悪魔は ､ 俺を天国へと引きずり堕とす


何も考えられない程 ､ 思考回路はショートしていて


生唾をゴクリと飲む頃には ､ 彼女は俺に背を向けてその長い廊下を歩いて行った後だった


































佐久間「 阿部ちゃーん？ どうしたの？ 」












二時間目から参加した授業

一時間目の授業内容を聞こうと自分から佐久間に話しかけたものの ､ 全く頭に入ってこない
あの馬鹿な佐久間に心配される始末だ










佐久間「 めちゃくちゃ上の空じゃん ､ 面白。 」










佐久間はニヤニヤと馬鹿にしたように笑った



放課後
理科室



俺の頭には今 ､ それしかなくて

行ったら駄目だ ､ そんな事は分かっている
彼女は悪魔
行ったら何をされるか分からない

また堕落した道を歩まされるかもしれない




現に ､ 俺は今日遅刻した
人生で初めての遅刻

彼女と関わる度に ､ 俺の中のアイデンティティが必ずと言っていいほど崩壊する

彼女は危険だ ､ 行ってはいけない













阿部「 何でもねぇよ ｡ 」


































何回目かも分からない放課後

人がまばらになった廊下


いつも見ているはずの夕焼けが ､ 今日はやけに赤く見える











佐久間「 阿部ちゃん ､ 帰ろう？ 」










佐久間がいつものように話しかけた

此処で俺が普段通り返答すれば ､ また変わらない日常がやって来る






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