王子は意外とそばにいる（緑）２ (ページ17)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:113,462 hit

６５ページ17

「これからのことなんやけど。」

急にまじめに話し出す大倉さん。

「今何の仕事してるとか、どこにいるとか、言えんことが多いのよ」

『はい、、』
そりゃそうだよね。

「“仕事や”って言い訳しかできないねん。
だから疑わんでほしいのよ、ほんまに仕事やから。」

『･･･がんばります』

「あと、家におっても、仕事してることも多いねん。
ライブの構成とかも俺の仕事やから。
パソコンばっかやってても、邪魔せんでほしいっていうか、理解してほしいっていうか。」

『ライブの構成って大倉さんがやってるんですか？！すごい、、』

まだひとつのライブDVDしかみてないけど、あんなすごいもの作り上げてるなんて、、

「そうやって、すごかった、楽しかったって言ってもらえるものを作らなアカンのよ。
これから先、ずっと。」

「一緒に外に出られんし、デートもろくにできん。」

「でも、寂しい時はちゃんと寂しいて言うてほしい。できるだけ応えたいって思う。」

「それでも俺はAちゃんの側に居りたい。」

「Aちゃん。
俺と、付き合ってください。」

一本の糸がピーンと張られた

空気が止まって

呼吸も一瞬止まって

張られた糸の向こう側に大倉さんがいる

未来の私はどんなことになってるのかな

どこか他人事な感じが消えない

でも、私はこの糸が張っても弛んでも、自ら切ることはしないな、って、思った。

『大倉さん』

「ん？」

『・・・キス、して』

「・・・・・」

『目が覚めなければ、信じられるんじゃないかと思って』

ふ、と目を細めながら
大倉さんはまた隣に座ってきて。

「キスしたら、もう俺しか見れないけど、ええの？」

『うん、、』

「A、」

優しく名前を呼んで

両手でほっぺを包まれて

初めてキスしてくれた。