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衣装を握りしめて、泣くのを堪えながら俺に笑いかけた。
「神ちゃ」
「シゲと話したくて、照史たちと話してんっ、
意味無くなっちゃったけど…、」
「神ちゃん、話そう、」
肩を掴んで顔を上げさせると、
涙を溜めて、無理矢理口角をあげた
「今更、…何を？」
「ごめん、俺、神ちゃん失うの怖くて、
離したくなくて、俺神ちゃんのこと信じれんくて」
「…っ、俺も怖かった、シゲに嫌われたら、って、
なにも言われへんくなって、恋人になるのに必死で、
女の子と歩いてても、聞かれへんかった…っ、」
「ごめんなっ、神ちゃん、ほんまにごめん。
好きやねんだから不安になって、でも失うの怖くて、
余裕なかったら、愛想尽かされるって思って、
怖がってんのわかってたし、痛いのもわかってたけど、
どうすればええかわからんなって、俺、最低でっ、」
首を振った神ちゃんは俺の手を肩から下ろさせると
白いスベスベした手で俺の手を握った。
「ごめんね、俺も。
シゲこんなに優しいのに忘れちゃってたや。」
「…神ちゃん、俺やり直したい。帰ってきてくれへん？」
今の2人ならやり直せる。だから、大丈夫。
「…やり直したい。次は…ちゃんとシゲの恋人になりたい、」
そう言ってくれたから思わず抱きしめると、
神ちゃんは体を硬くして、手を回してくれることはなかった。
「神ちゃん…？」
「シゲ、俺はもう、シゲのこと傷つけたくないの、」
「うん、」
「だからっ…ふぅ…っ、ん、もう恋人には戻られへん。」
「えっ…なんでっ！」
「邪魔、やろ？…俺。」
「ちがっ、違う！」
「んーん。違うことないやん。
もう俺照史たちがきてくれるねん、帰るねっ、」
「待って！お願い！！！」
ごめんね、そう笑うと神ちゃんは楽屋を出て行った。
ダラダラしてた俺はまだ着替えてなくて、
衣装さん困らされへんし、慌てて脱いで、
買ったばっかの靴の踵踏んで、追いかけたけど間に合うわけない。
「あ、あきとっ、照史にっ」
掛けた電話は、繋がらん方がマシやったかもしれん。
だって照史は迎えになんか来てないねんから。
メンバーにかけても俺の頭が白くなっていくだけ。
「神ちゃんっ、」
鳴らした電話は留守番に繋がって、
送ったメッセージは未読のまま。
俺が神ちゃんを探す方法も、追いかける意味も、何もない。
でも、今会いたいから。
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作者名：suta. | 作成日時：2023年6月30日 22時
