rd× ちゅーして6 ページ8
「もしもし」
『もしもーし、帰ったん？シゲも今慌てて出てってんけど』
「…シゲは知らへん。
ごめん、酔っちゃったみたいやねん、先帰るわな、」
お金のこと謝って、明後日の仕事で返すことにした。
流星はいいって言うだけど、俺が嫌。
ふと口の端が気になって触るとポロポロと白い塊が落ちた。
虚しいだけやのに。はあ、とため息が出る。
シゲのあんな顔初めて見た。
今まで俺にはみせへんかった顔や。
「神ちゃん！！」
「…っ、シゲ、？」
「ごめん！さっきは、…あの、」
「…大丈夫、」
「ちょっと来て」
腕を引かれて一般裏に入ると煌びやかな店が多い。
高いヒールと派手な髪をした女の子たちが俺らに声をかける。
特にシゲ。
前を歩いてるからかたくさん声をかけられてた。
…だって、かっこいいもんな。
「…入ろ」
「えっ、シゲ。ここっ…」
ギラギラした店の角に白と黒のシンプルな店の前。
ライトで照らされた文字はを見てびっくりした。
「嫌なら俺の手振り払って」
「…、」
少し緩められた手に驚いて手を下ろしてしまった。
振り返ったシゲはくしゃっと笑ってごめんな、って呟いた。
「さ、帰ろっか。」
段差からとんっと、降りてシゲは俺に微笑みかけた。
白い歯は食いしばっているように見えた。
「シゲ、」
「ん？」
「俺」
「いいよ、」
「…シゲが抱いてくれるなら、行きたい。」
「…」
「シゲ、最後に思い出、くれる…？」
「最後って」
「行こ、シゲ」
今度は俺の番。
腕を引いて中を急いだ。
空いている部屋は一つ。
ベッドとソファしかない部屋。
いつかシゲと来たいと思っていた。
一緒に泡の風呂に入って、ギラギラしたベッドで寝て、
ケーキとかも食べたいなって。
ボタンを押して出てきたキーを受け取った。
その間シゲの腕は離さない。
だって離したらシゲ帰るに決まってるもん。
エレベーターの中ではすみにもたれて下を向く。
あいにく鏡はないから目は合わない。
シゲも握られた腕をだらん、と力無くおろした。
「神ちゃん」
「ん？」
「最後って」
「最後。シゲと俺は今日で終わるから。」
「…そっか」
部屋に入るとほんまに質素な部屋。
手前の扉に風呂とトイレがあって、中はベッドが一つ。
その隣にソファと小さなローテーブル。
一つしか空いてない割には綺麗やったかな。
「シゲ風呂先入る？俺だけでいいか、」
「神ちゃん最後っていうたやんな」
「うん」
「じゃあ、一緒に入らへん？」
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作者名：suta. | 作成日時：2023年1月14日 14時
