rd× cover 5 ページ36
扉が開いて濱ちゃんと2人で入ってくると
力なく笑って俺の隣に腰を下ろした。
俺の元へ来たかったんじゃない。
1番近くやっただけ。
濱ちゃんがそこに座らせたから仕方なかったんやろう。
「へへ、濱ちゃんが買うてくれた」
みんなにオレンジジュースを見せて嬉しそうに笑った。
いつのまにかこんな顔も見れなくなった俺。
大好きな神ちゃんが笑える日はいつになるんかな。
その隣は俺やなくていい。神ちゃんが幸せなら。
「神ちゃん」
いつになく優しい声で望が立ち上がった。
振り返る神ちゃんの腰にそっと腕を回して座り込んだ。
望なら神ちゃんも甘えられるはずやし。
そう思ってさっきまで望がいたスペースへ移動して、
流星にちょっかいをかける。
照史のやめや、って声を聞きながら照史も巻き込んで。
上に乗っかったり関節技かけて遊んでやった。
淳太も立ち上がって神ちゃんの元へ紙袋を持って行った。
あの中には神ちゃんの好きなものが詰まってる。
紅茶とか、ココアもそうやけど、
甘い匂いのキャンドルとか、タオルケットとか
安眠できるものを集めておいた。
好きな人のものくらい、俺だって気になってたし。
覚えてるもんやねんなあ…普段の何気ない会話。
「なあ、ええんか？」
俺も頭を固められた状態で流星がぼそりと呟いた。
びっくりしたけど、俺もみんなに迷惑掛けてたから。
「うん。そんなことより神ちゃんが大事や」
「そっか」
「シゲ」
振り向かなくてもわかる。
俺の大好きな人。
収録でしか呼んでもらえない。
いや呼ばせないようにしてたんかもしれへん。
でも今、カットがかかってカメラは回っていないはず。
振り返るとさっきのクマなんかわからないように
いつもより濃く化粧をした神ちゃん。
カメラが止まってたのに、
「なに？」
「っ、今日、」
「あ、淳太！！ちょっと来いって！！」
通りかかった淳太を捕まえてヘッドロック。
俺と2人なんか話にくいやろうしな。
「んで、なに？」
「んーん、なんでもないよ」
へへへ、と笑う顔はいつになく疲れてるけど、
やっぱ好きな人は可愛いよなあ。
「あほシゲ」
「ん？」
固められたままの淳太がはあ、ってでかいため息を吐いた。
「望、今日行かんねんて」
「へ！？なんで！？」
「神ちゃんが断ったから」
「あかんって！神ちゃん1人にしたら！」
「ぇっ…」
やば、声に出してもうた。
聞こえてた？そっと後ろを向くと手を口に当てた神ちゃんがおった。
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作者名：suta. | 作成日時：2023年1月14日 14時
