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rd× cover 2 ページ33

「…それっ、ほんまなん?」

「っ…そんなわけっ、」

ガタン!ってでかい音立てて前の椅子蹴れば
二人が俺を抑える力が強くなった。

「…っ、」

「シゲっ、それほんまなんか?」

「…ぉん、さっきそいつらが話してんの聞いた」

「っ、お、おるん…?」

ほら、やっぱり、
ちょっとカマかけただけ。
それでもあからさまに表情は変わる。
真っ青になって、口元に手をやって。
はっとしたのか慌てて手を下ろして目を逸らした。

「神ちゃんっ、ごめん!そんなん知らんとっ…、」

「大丈夫、」

「…」

「もんち、その話マネは知ってんの?」

「…んーん。誰にも言うてない。」

さっき、たまたま聞いてしまっただけ。
神ちゃん襲った奴がトイレで電話してたらしい。
俺に仕事取られただの、難癖付けて襲おうと思ってたら
神ちゃんやったみたいで、男やけど抱いたって。

俺らもマネも事務所も、俺が襲われるかもって話はしてた。
でも、その身代わりを神ちゃんがするってことになってるんは
俺だけ知らされてなかった。

そりゃ、そんなんさせるわけないやんか。

ほんまに大事にしたい人やねんから。


「…神ちゃん」

「シゲっ、ごめんな?俺、シゲが怪我せんならって…
 大事な映画も、ドラマもあるやろ?
 俺はおらんくても大丈夫やけど、シゲにはっ」

「ええことしたつもりなん?男にもモテて嬉しいんやな、」

「シゲ!お前!!」

「…流星、大丈夫やから。俺の独りよがりやねん、」

ニコッと微笑んだ神ちゃんを
小瀧がそっと抱きしめた。

怒った年上組は楽屋を出て行き、
俺は今も、無気力のまま見ることしかできひん。

わかってる。傷つけてるのは俺やって。
酷いこと言うたのも、また思い出させたのも。

みんなの前でこんな話すれば神ちゃんがさらに傷つくことも。

わかってるはずやのに、悔しくて堪らない。
1番大切にしたい神ちゃんやから、傷ついてほしくなかった。

「…シゲ、俺は喜んでシゲの身代わりになったんよ。
 やから気にせんといて…?な?」

「…」

「のんちゃんがこんな思いせんくてよかった。…シゲも」

「でもさ、神ちゃんがそんな思いも」

「俺は、大丈夫やから、みんな、ごめんなさい。」

そう言って楽屋を出て行ってしまった。
収録の時間だって迫ってきてるのに、どこに行くん。

『大丈夫?』

そう聞いてあげたいだけやのに、そんな言葉も出てこない。

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作者名:suta. | 作成日時:2023年1月14日 14時

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