rd× お好きにどうぞ 5 ページ26
「神ちゃん行ってら〜」
「はーい！」
楽屋を出て行った神ちゃんを見送った俺らは二人きり。
こそこそと四つん這いで寄ってきた濱ちゃんが
俺の横に座って携帯を取り出した。
「シゲちゃん！あのさ、神ちゃんってどうしたらいい？」
「え？」
「あの子、全然頼ってけえへんくてさ、
こないだもスタッフに声掛けられてたのに
我慢してたみたいやねん。」
そんなはずはない。
仕事場では俺の隣から離れへんかったし、
困ったらすぐに電話かけてきてたのに。
「それにな、断りきれんかったみたいで
マネが気づいたからよかったけど…。
何してあげたらいいかわからんくなっちゃって」
断るために濱ちゃんおるんやないん？
ってかそもそも泊まりにも行ってへんの？
「逆に楽屋だけやで？あんなに俺に引っ付いてんの」
「…そーなん、俺、別に」
「シゲちゃんだけやねん、わかるん。
神ちゃん、俺んちきた時に言うてたん、
『シゲには素敵な人がおってん、』
って。なにがあったん？」
濱ちゃんに訳を説明しても神ちゃんからはなにも聞いてないらしく、驚いてばっかりやった。
「まあ俺が悪いんやけど」
「でもさあ、怒ってたってことやろ？
ただの恋人役にしてはおかしない？」
…たしかにそれもそうや。
ほんまに俺のことをそう思ってるならわざわざ、
いや、ただ気を使ってくれただけやろう。
「やっぱ神ちゃんにはしげちゃんしかおらんな！」
ははっ、と大きな声で笑う濱ちゃんは俺らの気持ちなんか知らんの？
俺はこんなにも好きやのに。
神ちゃんには届かへんねんで？
「まあでもあんなんバレたらもう無理やって。
俺はただの恋人役。」
「でもしてたんやろ？」
「まあ、神ちゃん慣れてたんちゃう？
誘ってきたのも神ちゃんやったし、キスも普通にしてたし」
「俺、一回もしてへんで？」
「え？」
「それに神ちゃん、ちっさい頃からこの業界やから
どっちもまだやで、」
どっちも、って、
俺には、なにも言わんかったのに…。
いや、それに神ちゃんは俺を気遣ってくれてただけで…
「いいやん。思い過ごしでも。
ただ好きって気持ちだけはあかんかな？」
そう言うと濱ちゃんはカバンを持って楽屋を出て行った。
待っとくはずの神ちゃんはまだ帰ってきてないのに。
帰るか？
いや、待つか？
でも俺の思い過ごしじゃまた傷つけて、
いや傷つくことなんかない、
だって神ちゃんは
「濱ちゃん〜、お待たせー！」
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作者名：suta. | 作成日時：2023年1月14日 14時
