ともくんの2 (ページ41)

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rd× すれ違い4 ページ41

「しげ、大丈夫？」

「痛たた…ごめんやん、神ちゃん」

「んーん。」

「俺もう大丈夫やから、帰ってや？」

「あほか、風呂どうすんの？ご飯もあんのに」

「なんとかするよ」

「右手、使われへんかったら不便やろ。」

今日のロケの帰り、シゲは躓いた拍子に右手を痛めてしまった。
足も挫いたのか引きずって歩く様は痛々しい。

「…神ちゃん、世話してくれるん？」

ソファに腰掛けたシゲは俺の方を見てジャケットを脱いだ。

「へ？別にええけど…、」

「ほんなら泊まっていってや」

泊まる？今までならよくあることやった。
でも今泊まっていいん…？
友達の関係ならそんなん普通か。そっか。

「ええけど、俺準備とってくるわ、」

「いや家にあるし、使って？」

指さされた引き出しを開けるとそこには俺が使っていた
化粧水やら何から何までが出てきた。

「ありがと、使わせてもらうわ」

「ん、」

キッチンに立つと綺麗に整えられていて、
洗い物は済まされている。
出てきたゴミは沢山の惣菜やコンビニで買ったもの。
…唐揚げのゴミ、ひとつも出てけえへん。
好きやなかったんやな。

適当に野菜を切っているとバタン！と大きな音がした。

「シゲ！！」

慌ててリビングを覗くと何を思ったのか立ち上がって
上の棚に手を伸ばしたらしい。
幸い怪我はなかったものの、罰悪そうに笑って見せた。

「ごめん、新しい下着とか出してあげようと思って…」

「そんなんええから、俺は自分で何とかするから」

もう一度座らせてやるとごめんな、そうまた笑った。
首を振ってキッチンへ戻ると暫くしてシゲの話し声が聞こえた。
彼女からの着信やろう、
そう思って換気扇を消して、音を立てないように静かに煮込む。
どんどん溶けていくルーを見てシゲとの会話が蘇る。

「神ちゃんのカレーうまいよなあ！」

「そう？」

「うん！愛情いっぱいやし！」

今でも愛情入れればシゲはまた戻ってきてくれるんやろか。
美味しいって笑ってくれるかな。
今入れて何もなかったら悲しくなるだけ。
…だから、今日は入れない。んーん。これからも。

「…味、変えた？」

「えっ？」

「味。煮込み加減かな？今日、いつもとちゃうから…
　いや！美味しいで！美味しいねんけど…」

「前の方が良かった？」

「やっぱり？ちょっと変えたやんな！
　美味いのは変わらんねんけど、前の方が好きかも」

「そっか、」

スプーンを止めることなく最後まで食べたシゲはおかわりしなかった。