rd× すれ違い2 ページ39
「おはよ」
眠そうに目を擦りながら、クマを作った神ちゃんは
遅い時間に楽屋にきた。
入り時間ギリギリは、神ちゃんにしては珍しい時間。
「大丈夫？」
「うん、大丈夫！ゲームしすぎてん。」
へへへ、と笑った神ちゃんはいつものように鞄を置いて
俺の隣に腰掛けた。
あまりにもいつも通りすぎて、会われへんかった分嬉しかった。
「神ちゃん最近忙しい？」
「んーん！でもシゲ忙しそうやなあ。
家に行ってもなかなか会われへんやん？」
「んー、今日唐揚げ食べたいねんけど…」
「唐揚げ？ええよ、作ったげる」
「よっしゃ！ありがとう！神ちゃん大好きや！！」
そう言って抱きつけば恥ずかしそうに笑って俺に擦り寄った。
俺も嬉しくなって小さな唇に何度もキスをした。
「ふふ、しげ恥ずかしいってぇ」
そう言って二人でずっと微笑み合った。
「お疲れ様」
「ん、おつかれえ」
「ご飯する？」
「うん。でもその前に神ちゃん食いたい」
「んも、しげったら…、」
でもそんなのも遠い昔の話。
神ちゃんの荷物が全てなくなって、しばらく経てば
そんなこと遠になくなってる。
日頃から大事にしてなかった俺は引き止めることも
もう一度連絡することもできひんかった。
「神ちゃん…」
「ん？」
「…仕事どう？」
「あー、舞台近づいてるし、ちょっと大変かな」
「そっか、頑張ってな」
「うん、ありがとう」
こんな会話しかできんくなった。
それもこれも俺のせい。
神ちゃんの言葉を待ってばかりの俺が悪い。
買ってきたパンを口に含んでコーヒーで流し込む。
作ってくれた朝メシが恋しい。ここ最近ずっとこれ。
神ちゃんの飯も、笑顔も身体も声も全部全部恋しい。
でもこれ自然消滅やろ…？
「シゲ、最近そのセット多いんやなあ」
「あー、うん。俺、これ好きやねん」
好きなわけない。神ちゃんの料理に勝てるもんなんかないよ
でも神ちゃんは目を細めて俺に笑った。
2人でのロケは楽しかった。
仕事に託けて、甘えて、近づいて。
一緒に飯食えて、幸せやった。
神ちゃんはそう思ってくれてる？
俺のこと、どう思ってる…？
「しげ」
「んー？」
「ちょっと近すぎ。」
「へっ…あぁ、ごめん」
「いくらファンのためでもダメよ？
仕事に支障きたすのはあかんって約束忘れた？」
「んーん、ごめん」
ふうっとため息を吐くとロケバスの方へと戻った。
俺と別で帰るためにさっさと準備したんやろう。
俺は背を向けて、スタッフの方へ向かった。
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作者名：suta. | 作成日時：2022年9月18日 10時
