rd× すきなとこ2 ページ37
「なんで書かんかったん？」
少し溜め息を混ぜた声で照史が隣に腰掛けた。
書かんかったんやなくて、
書けんかったの。
そう言いたくても言えない俺は横に首を振った。
気を抜けば開いてしまいそうな唇を慌てて噛んだ。
「しげに、謝ってくる、…」
「神ちゃん、今はやめとき」
「…」
「んー、なんでなん？」
のんちゃんが俺の背中を撫でながら甘い声を漏らす。
「…間に合わんかった、だけや、」
「ほんまに？」
「うん」
濱ちゃんが大きな溜め息をついたあと、そっか、と言って楽屋を出て行った。
「…正直に言わへんの？」
「ちゃんと言うてる」
「じゃあわざと傷つけたんや」
「違うっ…！俺、わからんくて！」
ハッとして思わず口を塞いだ。
それでももう出てしまった言葉は戻らない。
「…」
「何がわからへんの？」
「…シゲが、俺なんかの何が好きかわからんのっ…！
好きって言うてくれても、どこかなんかわからんし、
ほんまに好きかもわからんもんっ…、
流星とか、淳太がいいに決まってるっ！
…俺がシゲのこと、好きじゃなくなったら、
シゲは俺のこと、どうでもよくなんねんで…？」
2人は悲しそうに目を見開いて、そっと息を吐いた。
今だってシゲは流星と淳太といれて楽しいはずや。
破られた紙を拾って小さく折り畳んだ。
そのままゴミ箱へ投げた。
俺だってこんな風に捨てられる。
「…今のは、シゲに言わないでね、迷惑かけるから」
「迷惑って…」
「うん。迷惑やの。俺の不安とか、全部、俺が好きなだけ。」
しばらく沈黙が続いて、きまづくなってしまった。
2人は顔を見合わせたまま何か言いたげやけど関係ないし…。
「…みんなごめん、さっき、キレてもうて」
声のする方を振り返るとシゲが
みんなに怒られてしまったんかしょんぼり帰ってきた。
「神ちゃんもごめんな、怒ってもうて…、
嫌いになった？俺あかんかなあ…全部好きやからさ…」
「こら！そんなん言わんって話したやろ！」
淳太に咎められてもシュン、として落ち込んでしまった。
「んーん、俺もごめん。恥ずかしかっただけやねん」
そう言ってシゲを抱きしめるとぎゅーって苦しいくらいに
締め付けられて、ふふ、と笑った。
「ん！大好き！俺、神ちゃんと一生離れへん！」
「ありがと笑笑」
「嘘やで。神ちゃんはシゲのこと信じてないで」
「えっ」
「な、何言うてっ」
濱ちゃんが俺らをまっすぐ見るから慌てて首を振った。
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作者名：suta. | 作成日時：2022年9月18日 10時
