◯ ページ12
赤
「…ごめん。」
「え？」
いきなり亮がや すに向かって謝りだした。
「これ、違う。俺がやった。」
「は？」
「ちがっ、亮、あの後転んでん。
違う、違うから。」
や すが亮の前に来て必死に庇おうとする。
おーくらも怒りが込み上げてんのか声が低い。
「どーゆうことやねん。」
「…俺が、さっき」
「帰ろ！す ばるくん！
おーくらも！帰ろ！ね！」
「おい、途中っ…」
「あ！せや、俺んちで飲まへん？な？な？」
「ええけど、でも、」
「行こ！亮も！車で待ってる！」
俺と亮に腕を組んで急いで楽屋を出る。
「おーくらカバンお願い！」
車に行っても手首が痛いんか片手で運転しだす。
「や す、なんか買って帰ろ？
昨日冷蔵庫なんもなかったやろ？」
「ほんまや、俺酒しかなかったかも。」
二人で笑った後に、おーくらがや すの髪を撫でる。
くすぐったそうに笑う首筋には赤い印が
道路の街頭でチラチラ見える。
「お似合いっすね。」
亮がぼそっと投げ捨てるように呟く。
俺にしか聞こえてへん。
「…せやな。今日言うつもりやったのに。」
「もー、ええやないすか。
…俺らはぶられてるっすね。」
俺は言いたい。好きやでって。
でも、あの顔見たら言えんな。
「みんな何食べたいー？」
優しそうにミラーを見ながら俺らを確認する。
ニコニコして可愛い顔してる。
そんな顔にできんのはおーくらだけか？
「な、お前ら付き合ってんの？」
「えっ、なんで、そんなっ…
付き合ってへん…けど…。」
ってか付き合ってへんのにやったって何？
「な、自分らなんなん？」
おーくらが振り返って俺たちに放つ。
「自分らのことは棚上げて俺らのことばっか？」
「なっ、」
「す ばるくん、や すのことどうも思ってへんなら
別にええやん。誰と会ったって関係ないやろ？」
「…」
確かにそうや、俺は何も言ってない。
それに誤解されたままやのに何も伝えてない。
「亮ちゃんも。俺が好きっていうた時は
離れたくせに、俺が離れたら嫌って。
おかしいやん」
「…ごめん。」
「二人がや す傷つけてんのわかりーや。」
「…っく、ふぇ、ぅっ…、くっ、」
「ごめん、しょーちゃん。俺が、勝手やけど…。」
亮が話し始めた時におーくらが車から降りた。
あー、着いたんかスーパー。
でも今行かんでええやろ。
すぐに運転席に回って。
「や す、俺がしたげる。降りておいで。
亮ちゃん、家で話そ。待てる？」
「うん。」
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作者名：suta. | 作成日時：2021年3月21日 2時
