弐 其ノ廿 ページ31
バンと蹴破った先の広間にひとり、男が立っていた。
「…お互い、顔は見知っているが話すのは初めて──でござるな…」
「ああ…」
「般若にも言った台詞でござるが──拙者、不要の闘争は出来れば避けたいでござる。そこをどいて観柳と恵殿の居場所を教えてはくれぬか」
「…そう言われて般若は道をあけたか?あけなかっただろう。二人の居場所はその逆刃刀で問え。俺はこれで答えてやろう。」
すっと男は外套を捲る。腰に下がっていたのは太刀よりも短く、脇差よりも長いものであった。
「脇差一本で相手する気かてめえ!」
『弥彦くん、あれは…「人をなめるのもたいがいにしろ!」このガキ…』
脇差では無いよと言いかけたところで言葉を遮られてしまった。
「お子様は下がっていろ」
と、男は冷たく言い放った。
「てめえ!!」
「拙者もそう願いたいでござる。」
そう言った兄様を弥彦くんは睨みつけた。
『はいはい。では邪魔者は下がりましょうね。弥彦くん』
ズルズルと首根っこを持って無理やりさがらせる、
「待て。」
『…私ですか?』
「お前以外に誰が居る。」
私の方を見て冷たく言い放った。
「何処かで会ったか。」
『…ええ。会っていますよ。なんせ、同じ幕末に江戸城を護るべく雇われたのですから。』
私は振り返りニコリと笑いかける。
『同じ幕府お雇いのくせに1度も会うことは無かったですね。四乃森蒼紫さん。』
四乃森さんは何かを察したように目を見開いた。
「お前…まさか、」
『それ以上は、口にしないで頂けますか?元同業者として、情けぐらいかけてくださいよ。』
私は前を向き直し、弥彦くんを連れて下がった。
「ったくどいつもこいつも!いいか、たかが脇差一本に手こずるなよ!さっさと済ませよろ!」
そう言い放った弥彦くんに兄は呆れたようなため息をついた。
「確かに、あれが脇差なら手こずらずに済むでござるけどな。」
「“小太刀”の特性を知っているようだな」
「コダチ?」
弥彦くんは首を傾げた
『はぁ…士族の癖にそんなことも知らないんですか。小太刀とは簡単に言ってしまえば刀と脇差の中間の刀です。刀より短い分、攻撃力には劣りますが、軽量で小回りが聞く分、防御力は非常に高い。“盾として使える刀”それが小太刀の特性です。』
「あれを相手に攻めに回るのはかなりの不利か…」
兄様はグッと敵を見据えた
「そうか、ならばこちらから攻めてやろう」
「な…?」
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碧(プロフ) - チア様!コメントありがとうございます!私も文才がない中、必死に勉強しながら書いている所存でございます。これからも日々精進していきますので暖かいような生暖かい目で見守ってくださると幸いです! (2021年1月24日 22時) (レス) id: bdcd37c099 (このIDを非表示/違反報告)
チア(プロフ) - 儚い貴方との思い出を楽しく見させて貰ってます!これからも、頑張ってください。楽しみにしてます! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 85b9df66b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧 | 作成日時:2020年12月18日 21時