弐 其ノ拾捌 ページ29
ガコンと、般若さんの顔から面が壊れ落ちた。
「…」
「化物だ」
面の剥がれた彼の素顔は想像を絶した。
「化物か、フフ…。これでもこの顔は便利なんで気に入っているんだがな」
便利、だと…?
「お主…その顔は自分で──」
「まあな。私は密偵方。第一の任務は戦闘ではなく諜報工作。いかなる顔にも変装出来るように自分で唇を焼き、耳を落として、鼻を削いで頬骨を砕いた」
そう述べる般若さんの狂気さに少し悪寒が走る。
「…お前達がどこの生まれかは知らないが、私の生まれた地方には貧しい村が多い。そういった村では喰い扶持を減らす為、親が子を殺す裏の風習が今でもある。私の生まれた村では“子返し”といっていた。」
「まさか…おめえ…」
「かろうじて死を免れでもう家にはいられない。“子返し”を受けた時点で人生は終わり。それから先は犬猫のように徘徊し、孤狼のように殺して奪う獣道だけ。」
「だが!!!」
ジャキンと般若さんの手の甲から出てきたのは鉤爪であった。
「鉤爪!!」
「そんな孤狼と化した私を蒼紫様は拾って下さり!一流の隠密に育て上げて下された!」
「そして私に江戸城御庭番衆という!生きがいと同胞を与えて下された!!」
ドンッと床を蹴りあげ、こちらへと走り飛び込んで来た。
「蒼紫様のお役に立てるのならば!顔も命も私には無用!!」
「気をつけろ剣心!こいつはヤベェ!!」
「こいつは御頭に…御庭番衆に全てを賭けた“狂信”の化物だ!!」
鉤爪を立て、兄様へと狙いを定めた。
「般若!ひとつ答えろ!お主は恵殿の過去を!知っているのでござるか!?」
「見くびるな!御庭番衆密偵方に知らぬことなど何一つとて無い!!」
般若さんは鉤爪を兄様向けて振り下ろした。
兄弟子はグッと刀を握り、鉤爪の間に刀を入れ込み抑えた。
「ぐ!?むう…!!」
鉤爪と刀が動く度、ビリビリと鉄の擦れる音がする。
ばっとお互いが距離をとる。
お互いが踏み込み、構えた。
「キエエエ!!!」
「おおおお!!!」
お互いの技がぶつかった。
兄様の肩から血が吹き出す。
「フン。ダメだな」
「そんな腕では蒼紫様の足元にも及ば…な…い…」
般若さんはドサリと床へ倒れた。
「やっと堕ちやがったか」
「手強え奴だったな」
「…般若。お前は人一倍孤独の辛さを知っているはずなのに、どうして恵殿のコトは考えてやれなかった…」
「剣心…」
『…』
「…恵殿が気がかりでござる。先を急ごう」
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碧(プロフ) - チア様!コメントありがとうございます!私も文才がない中、必死に勉強しながら書いている所存でございます。これからも日々精進していきますので暖かいような生暖かい目で見守ってくださると幸いです! (2021年1月24日 22時) (レス) id: bdcd37c099 (このIDを非表示/違反報告)
チア(プロフ) - 儚い貴方との思い出を楽しく見させて貰ってます!これからも、頑張ってください。楽しみにしてます! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 85b9df66b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧 | 作成日時:2020年12月18日 21時