弐 其ノ拾録 ページ27
般若さんはキエエエと、声を上げながら兄様へ殴り掛かる。
兄様はそれを見切り、紙一重で避けた。
避けたと思われた。
避けた拳は兄様の顔へと直撃した。
そしてまた、飛んできた拳を紙一重でかわした。
だがしかし、それもまた直撃し、もう一撃喰らわされそうになったがそちらはどうにか避けていたようだった。
「このスカタン!!」
「おろ!?」
攻撃を避けきれていない兄様に腹を立てたのか、弥彦くんが飛び蹴りを食らわせた。
「何ボコボコに殴られてんだよ、お前らしくもねーっ!さっさと飛天御剣流十八番の“読み”を使えよ!」
「もう使っているでござるよ。拙者は紙一重でかわした。奴の拳打も裏拳も読んだ。だが目前でやつの腕が一瞬伸びた…!」
「どうした抜刀斎。お前の力はこんなものでは無いはず。私の術すら破れない様では御頭と闘っても一分と持たないぞ。」
「術!?」
『成程。忍の忍術と言うやつですか。興味深いです。』
ニヤリと笑って腕を組んだ。
「私は江戸城御庭番衆“般若”。拳法家であると同時に隠密でもある。お前は1週間前私のこの姿を目にしたその瞬間、既に私の術中に堕ちている。気付かぬうちにな。」
だとすれば、この術とやらの根源は般若さんの姿形にあるという訳だ。
なんだ、この違和感は…。
先程の兄様が避けた裏拳。私でも同じ避け方をする。あれは本当に紙一重で避けていたはず…。
『…まさか、ね。』
「成程。術…でござるか。厄介だが、まずはそれを破らねばならぬ」
兄様は刀を真っ直ぐ構えた。
「オイ少年剣士。あの構えはなんでえ?」
「知らねーよ。見たコトもねえ。五行の構えの中じゃ正眼に一番近いけど明らかに違う。」
『“信剣”の構えですね。』
「しんけん?」
『信じる剣と書いて信剣。正眼から両腕を高く挙げて伸ばし、刀を真っ直ぐ水平に、切先を相手の眉間に付ける様構える。相手の如何なる変化にも即応出来る古流剣術に見られる防衛堅固の構え。』
まさか、読み切ったか…。
あの二発で、術を解く仮説が立ったとは兄弟子の頭の中も末恐ろしいものだ。
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碧(プロフ) - チア様!コメントありがとうございます!私も文才がない中、必死に勉強しながら書いている所存でございます。これからも日々精進していきますので暖かいような生暖かい目で見守ってくださると幸いです! (2021年1月24日 22時) (レス) id: bdcd37c099 (このIDを非表示/違反報告)
チア(プロフ) - 儚い貴方との思い出を楽しく見させて貰ってます!これからも、頑張ってください。楽しみにしてます! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 85b9df66b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧 | 作成日時:2020年12月18日 21時