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歌ウサギ 2 ページ8

「なんか久しぶりだね？会うの」

『せやな、仕事がちょっと忙しかってん』

昔から要領のよく、頭が切れる亮ちゃんは
さぞかし仕事ができて、後輩ちゃんからもモテるんだろう

そんなことを考えていると、
自然とため息がついた

『なんや、思ったより落ち込んどるな？笑』

「ちょっとね、今日は色々あってさ」

『ふーん、そっか』

亮ちゃんの、深くは聞いてこないスタンスが
私は心地よかった

一時間ほど車を走らせついた海岸

『さっむぅ～～！』

「やから、あったかい格好してこいよーっていうたやん」

貸してやる

そう言って自分が来ていたパーカーを
着せてくれる

俺は皮膚が人より分厚いから
大丈夫やねん

と、白い綺麗な歯を見せながら笑った

運転してくれるから、せめてものお礼にと

家から暖かい紅茶の水筒を持ってきた

2人でそれを飲みながら、
たわいもない話をする

「なぁ、」

『ん？』

「今日叫びたかったこと、もうええの？」

『あー、はは、まぁ上司に胸糞悪い思いさせられてさ、ちょっと感情的になっちゃった』

「前言ってたあのクソ上司？」

『なんか話したっけ？いや、ミスしちゃってさ、それを女だからって言われて怒られたの。それにすごく腹たっちゃってさ・・』

じっくり私の話に耳を傾けてくれる亮ちゃん

「俺、まゆの考え方好きやねん。昔から」

『なにそれ、笑』

「しっかり軸があって、責任感強いところ
変わってなくて、安心した」

これ慰めにはなってへんかもだけど

そう言って照れ笑いする亮ちゃん

昔から亮ちゃんは、照れながらも
自分の気持ちをストレートに伝えてくれる人だった

『ふふ、ありがとう。わたしも、亮ちゃんなにも変わってなくて安心した』

なんやねんそれといって笑う亮ちゃん

あれ、なんか心地いいな

なぜか突然沈黙になり、気まずくなる

この胸のざわざわはなんだろう

ふと、視線を感じた

亮ちゃんの方を向くと

近づいていた顔

2人の唇がくっつくのに、そう時間はかからなかった

唇を離し、至近距離で見つめ合う

2人とも、恥ずかしくなって
思わず照れ笑いしてしまった

「ねぇ、」

『ん？』

「今から恋始めるのありかな？」

『自分で言うのもあれやけど、
俺めちゃくちゃいい男やで？』

2人でおでこをくっつけて笑い合う

こんな恋の始まり方もいいのかもしれない

＿＿＿＿＿＿＿

スピッツより
歌ウサギ

帰り道の車で一緒に聴きたくて
選曲したっていう裏話笑