蝶の魅惑 ページ2
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しかし、Aはそんな善逸の態度に怒ること無く、柔和な笑みで言葉を返す。
「……善逸さんは本当にすごいですよね。どんなに強い敵にも負けないんですもの。でも……」
Aはゆっくりと善逸の手を握る。
因みにその心の内は「早く薬を飲ませなければ」ということしか考えていない。
「優しくて強い善逸さんも好きですけど、苦い薬を欠かさずに飲み続ける善逸さんは大好きですよ!」
キラキラと輝くAの笑顔。自分の手に重なるAの手。
その瞬間善逸の背後に大きな雷が落ちた。否、実際に雷が落ちた訳では無いが、それほどの衝撃が善逸の身体を大きく揺らしたのだ。
善逸はAの手から湯呑みを奪うと勢いよくそれを飲み干した。
「お、おぇえ……ま、まあこんな薬、俺にかかれば朝飯前だけどね」
善逸はAに向かってポーズをキメながら言った。因みにその顔は、勢いよく薬を飲んだせいか少し緑色だ。
「善逸さんったら流石ですね」
Aはニコニコしながら言った。
どうやら善逸の上手い扱い方をよく知っているようだ。流石はしのぶの元で働くだけある。
「それではまた後でお薬お届けしますね」
「はぁーい♡」
弛緩した顔でさぞ嬉しそうに返事をした。
尚、この男はさりげなく自分の求婚の話を逸らされたことには気付いていないようだ。
*
「紋逸の奴、何やってんだ」
機能回復訓練から戻ってきた伊之助が、ベットの上で不気味にうごめく善逸を見て言った。
「ふへへ……、だいすきかぁ……。いやぁ、うひひひ……」
「あれは……うーむ……。何かの病気だろうか……」
炭治郎は気味悪そうに呟いた。
「Aさん、また何かやりましたか」
「あらアオイちゃん。どうかしたの?」
「どうもこうも……善逸さんの事ですよ。あの人がずっとベットの上で不気味にニヤニヤしているんです。同室の炭治郎さんと伊之助さんが気味悪がってるんですけど」
「ああ、その事ね」
Aは可笑しそうにくすくすと笑いながら言った。
「善逸さんったらいつまで経っても薬を飲まないから、ちょこっと、ね」
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月22日 20時