蝶の魅惑:我妻善逸 ページ1
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「キャアアアアー !!!」
鬼殺隊蟲柱、胡蝶しのぶの私邸である蝶屋敷にて甲高い“男の”悲鳴が響き渡った。
「い、いっ、いま、てっ、手が……」
ベットの上で狼狽えているのは現在蝶屋敷で療養している鬼殺隊隊員の我妻善逸だ。
その近くには蝶の髪飾りをつけている少女、Aが湯呑みを片手に不思議そうに首を傾げていた。
何が起こったのかを説明すると、湯呑みを渡すAの手が善逸の手に触れた。それだけだ。
どうやらこの我妻善逸という男は思ったよりウブなようだ。
彼は身体をプルプルと震わせながら触れ合った手をおさえて真っ赤な顔を俯かせていた。
「ごめんなさい善逸さん、びっくりしちゃったわよね」
Aは申し訳なさそうに眉を下げた。
善逸が言った。
「けっ、」
Aは不思議そうに聞き返す。
「け?」
「結婚しよう!!!」
善逸の病気が始まった。
「責任を取らないと! もうAちゃん俺のこと好きだよね⁉ そうだよね!」
善逸は大声で叫んだ。
療養中だろうがなんだろうがお構い無し。今の彼に安静という言葉はない。
生憎、いつも彼のストッパーとなっている友人の竈門炭治郎は、一足早く機能回復訓練に参加しているので不在だ。
「だってAちゃん毎日俺の所に来てくれるし、いっつも俺に笑いかけてくれるし、絶対俺のこと好きじゃん! もう結婚しようよ!」
善逸はマシンガンのごとくAに向かって語る。
「(うーん……そんなことより早く薬飲んでくれないかしら……)」
Aはぼーっとした様子で善逸の妄言を聞き流していく。
勿論、Aが毎日欠かさずに善逸の元に訪れるのは決して恋愛感情といった邪な気持ちがあるからではない。
ただ彼女は善逸に薬を飲ませるという自分の仕事を務めているだけである。
しかしこの善逸という男は何を勘違いしているのか、Aのそれらの行動を自分への好意と受け取っているのである。
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月22日 20時