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運転手side






灰谷様に奥様がいることは承知している。なぜなら、今日のように、あそこ寄れだの嫁が待ってるから急げだの注文をするからだ。



とは言っても、大体行くのは会員制のジュエリー店や高級スイーツ店。今日もサッと行ってサッと買って帰るのだろう。








__車を走らせ約20分。車を停車させた。灰谷様は車酔いしやすいとのことなので、ブレーキを踏むのにでさえ最新の注意を払う。


ちらりと灰谷様をバックミラーから伺うとサイドガラスから店の状況を見ているようで、私も店に視線を移した。





目の前の長蛇の列に顔をひきつらせる。



……おいおいおい、まさかこの列に並ぶのか?この目立ってしょうがない男が??毎回毎回送迎するのもヒヤヒヤするこの男が???


いや待て、落ち着け。まずこの店で合ってるのか?カタギの人間しかいないだろ。そういえば、テレビでこの店の特集を見かけた気がする。



もう一度、灰谷様に視線を向ける。



…………え、なんか出る準備してない?え、いくの?行っちゃうの???いや、ちょ、ま、





「……灰谷様、私が行ってまいりますので、ご注文の方伺います。」




よ〜〜〜しよし、言ったぞ〜〜〜俺は勇気を振り絞って言ったぞ〜〜〜〜〜、!!!!!!






「……は?」





な、なにその反応……、え、なんか間違った?ヱ?部下として精一杯の行動なんだけど、やばいなんか変な汗出てきた、




ゆらりとシートから体を起こし、灰谷様はゆっくり口を開いた。



ああ、ちゃんと保険を選んでおけばよかった。












「誰がお前みたいなおっさんが買ったプリンを可愛い嫁に食べさせたがんだよ。」








…まだ、腕をおられた方がダメージは少なかったと思う。





傷心中の私を横目に、灰谷様はドアを開けて外に出た。ああ、これでもしちょうど警察が来てバンかけられたら終わりだな……、













__







「可愛い嫁へのプレゼント。自分で買わずになんの意味があるんだ??」




灰谷蘭の脳内にはこの疑問がぐるぐると駆け巡っていた。



並んだ時間は約1時間。普段なら15分も待たぬこの男は、「片手にAの写真を見てりゃ、1時間なんてあっという間だったわ」と言った。

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作者名:すき子 | 作成日時:2022年1月22日 23時

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