初対面の時間 ページ6
翌朝、珍しく早起きしたAは、いつもより早く学校に向かっていた。
誰も来ていないと思い込んで油断していたAの意識は、教室の扉を開けた瞬間、何かを叩きつけるような音で一気に醒めた。
ダァン！
「...え」
「あ、おはよう鳴海さん」
Aの目の前では、上機嫌な様子のカルマが笑顔のまま教卓の上でタコをシメていた。
特段軟体動物がそんなに苦手でなかったことは、Aにとって幸いだった。
しかし頭を貫かれたタコの目は見ていて気持ちの良いものではない。Aはそっとそれから視線を外した。
「赤羽くんおはよう...何それ？」
「ああ、これ？殺せんせーと間違えて殺しちゃったーってやったら、どういう反応するかなーっていうやつ」
「へ、へえ...」
何とか口から相槌を捻り出しながら、ふと昨日から引っ掛かっていたことがAの脳裏に蘇る。
今自分の前にいる彼は、していることはともかく、とても楽しそうだ。表面上は。
でも常に物騒な雰囲気を醸し出している。それが何か彼が先生の殺し方にこだわりを持っていることに関係が…？
いやもう考えない…とAがかぶりを振ると、ふと、あることが彼女の頭に浮かんだ。
『あ、おはよう鳴海さん』
...あれ？
おかしい。私、赤羽くんに名前教えたっけ？
「ねえ、赤羽くん。どうして私の名前を知ってるの？昨日自己紹介したっけ？」
すると、タコに向き合っていたカルマはAを振り返った。
「ああ、それなら渚くんに聞いたんだよ」
...あんまり赤羽くんと関わりたくないのに、渚くんめ、余計なことを...
などとAが考えていたのが露骨に顔に出てしまい、カルマは顔に苦笑いを浮かべた。
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいでしょ。ほら、
あからさまに嫌そうな表情をするAに、カルマはさらに笑う。
「まあ隣の席なんだし、仲良くしようよ。俺、赤羽業ね。よろしく」
「...鳴海Aです。よろしく」
カルマから差し出された手に、Aは何か仕掛けてあるのではと反射的に警戒する。
その様子がまたさらにカルマの笑いのツボを押した。
まあいいか。
Aはカルマの手をきゅっと握った。
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作者名：よる | 作成日時：2020年3月16日 0時
