隕石の時間 ページ5
殺せんせーは即座に彼らの私語を注意する。
いやいや貴方の触手の音の方がよっぽど気が散るわ、という言葉を飲み込み、Aがほっと息をついたのも束の間。
「ごめんごめん、殺せんせー。俺、もう終わったからさ、ジェラート食って静かにしてるわ」
そう言ってカルマは机の陰からジェラートを取り出した。
え、まって。もう終わったの早っ。そしてそのジェラートどっから出てきたの？
動揺は即座に生徒たちから集中力を奪った。
「そ、それは昨日先生がイタリアに行って買ったやつ！」
(お前のかよ！)
クラス全員の心の声が揃った瞬間だった。
わざわざ成層圏を飛んで買ってきたと嘆く殺せんせーを尻目に、カルマは悪びれもせずにジェラートを食べ続けている。
「へぇー？で、どうすんの？殴る？」
「殴りません。先生が残りを舐めるだけです」
顔を真っ赤にしてカルマに向かっていく殺せんせー。
するとその行動すら読まれていたかのように、足元の触手がブチュッと溶けた。
床にBB弾が撒かれていたのだ。
その隙にカルマが銃を3発撃つも、それはさすがのスピードで避けられる。
「あははっ、まーたひっかかった。
何度でもこういう手使うよ。授業の邪魔とか関係ないし。
それが嫌なら、俺でも他の誰でも殺せばいい。でもその瞬間から...
...もう誰もあんたを先生として見てくれない。ただの人殺しのモンスターさ。
あんたという先生は、俺に殺されたことになる」
どこか嘲りを含んだ笑みを浮かべながら、解答済みのテスト用紙を殺せんせーに押し付け、彼は教室から出ていった。
赤羽業は狡猾で、恐ろしく冷静だった。
仮に殺せんせーが逆上して彼に手を上げれば、殺せんせーもうE組の先生ではいられない。
それは生徒に危害を加えることを禁じられているということもあるが、何よりその時点でE組の誰も殺せんせーを先生として見ることができなくなる。
そのことをカルマも、そして殺せんせー自身もよく理解していた。
だから彼は綱渡りのような駆け引きを躊躇なく仕掛けられる。
しかし何のために。私は彼のことをあまりよく知らないからわからない。彼はまるで隕石だ。
ようやく慣れてきたこの日常を突然意味もなく破壊する、隕石。
Aはこれ以上考えるのをやめ、目の前の問題を解くことに集中することにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる | 作成日時：2020年3月16日 0時
