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鈴蘭の彼が思い出していたのは、2年ほど前の記憶。
確かあの時も今と同じような彼は誰時。
世の中は少年を置いて帰路につき始めていた。
道に佇む純白のパーカーを纏った少年ラウールは、被っていたフードをさらに深く被り直す。その手には申し訳程度の食物。
今日はあんまり盗れなかったなあ、と悲しげな笑みを零す少年は人気の無い路地裏に影を溶け込ませた。
数年前、物心着いてからずっと居た施設を飛び出してきた。だから僕には帰る家なんてない。最早この世界に居場所すらないのかもしれない、と考えたラウールは自分を嘲るように鼻で笑う。
一欠片のパンを齧りながらこれからの事を考える。流石にもう路地生活も限界に近くなってきた。これには説明すると理由は2つ。
まあまずはシンプルに気温の問題。夏は焼けるし冬は凍える。よく今まで生きてきたもんだな、と自分でも思っていた。
ふたつめはいつも盗みに入っていた店に顔を覚えられてしまったから。もう噂が拡がっているのかどこの店に入っても追っかけられるし…
ラ「痛っ…」
そこまで低くも無い標識にぶつかり、頭を擦りながら自分の身長を恨む。
毎日パン一切れも食べていないのにここまで伸びた背に物珍しい白金の髪。絶対店主に覚えられたのこれのせい。顔もあるけど、絶対銀髪と身長！
ラ「かと言って、戻るのはもっと無理…」
駄目だ、策がない。八方塞がりってこういうこと？
へなへなと壁に伝うように座り込めば待っていたかのように襲ってくる目の痛み。
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い！！！
焼けるような痛さと、凍えるような痛さが交互にとめどなく流れてくる。5年前に急に患ったこの痛みは、未だに慣れないしいつなるのかも分からない。
ラ「…やっぱり、」
痛みが治まって、目の前の建物にある申し訳程度の大きさの窓を手で拭いて自分の姿を映し出す。
虹彩が、雪のような白銀に染まっていた。
ラ「…なん、で、」
自分が目を向けた瞬間、視界の中にあった木箱が独りでに動き出す。
次は道に生えていた雑草に捨てられていた宗教勧誘のチラシ。挙句の果てには窓硝子が割れる。
弱冠15歳ながらラウールはこの状況を理解した。
能力の"暴走"である。
ラ「……こわい、」
未だに蠢きあう物と割れ続ける硝子への恐怖に、気づいた時には既に少年は意識を手放していて。
「えっ？！ちょっと、君大丈夫？！」
通りがかった燕子花に間一髪支えられたことなど、気づけなかった。
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mu-pon(プロフ) - コメント失礼します。初めまして、mu-ponと言います。いろんな事情があったんですね。この小説がとても面白くいつ更新かなと街に待っていました！今からも大変だと思いますが頑張って下さい！応援してます！ (2020年6月30日 21時) (
レス) id: df04c4729a (このIDを非表示/違反報告)
藤菜 - 初めまして！佐久間大好き！あべさくコンビも大好きです！この小説とても面白いですね！頑張ってください！応援してます！ (2020年5月29日 10時) (レス) id: 624e77d1d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんと(プロフ) - リクエストお願いします！ふっかさんが敵に誘拐されるお話が読みたいです。めちゃくちゃ好きなタイプのお話なので、今後も作品楽しみにしています！ (2020年5月25日 22時) (レス) id: 9203f39f18 (このIDを非表示/違反報告)
てんぷら(プロフ) - ゆり組のお話が読みたいです。2人の秘密に迫るというか、2人ならではの絆のお話しをお願いします。アバウトな感じですみません。。これからも応援しています。更新待ってます。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: d802e6ae3c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 藜さん» すみません！間違えました (2020年5月23日 23時) (レス) id: c9acd22823 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藜 | 作成日時：2020年5月16日 21時
