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遡ること、四半世紀ほど。俺と翔太は、同じ病院で生を受けた。
翔太の母親は「海姫」という能力者とはまた違った分野の人間で、唯一の生き残りらしかった。そして俺の母親は翔太の母親の側近だったことから、俺たちの物語は始まる。
1歩先を悠々と歩く翔太の後ろで俺が支える。そんな構図が親から受け継がれた俺たちの小さい頃からのテンプレートだった。
海姫の末裔である翔太は生まれた頃から血を摂取していたこともあり、なかなか世間は海姫の生態に理解を示す素振りはなかった。だから俺はずっと翔太のそばで母親からの教え通り翔太を支えていた。と、思う。
しかし、状況は一変する。
翔太と俺が軍人学校を卒業して、本格的な軍隊に入ったばかりの頃。もちろん俺たちは能力を隠して入隊していたため、翔太は血液の摂取が十分にできていなかった。
都市伝説で吸血鬼はトマトジュースを飲む、なんてものがあるけれど、実質それは半分正解で半分間違いだ。翔太も血を飲めない時はトマトジュースを代わりにしていたけど、本人によると
「ただの気休め。似てるから。」
との事だった。まあでも、飲まないよりはいいらしい。
そんなこんなで、翔太は3ヶ月以上血液を摂取することが出来ていなかったため、薬を補充しに1度家に帰ることになった。もちろん俺もついて行き、久しぶりに翔太のご両親に挨拶をして。
そこで事件は起きた。
翔太に禁断症状が出たのだ。
その日の夜。異常なほどの血液の匂いで目を覚ました俺はその匂いの元を辿ると着いたのは翔太の家の中でもかなり大きな部屋。
まだ夜も耽けきっていないため、まだ誰か起きているのだろう。そう考えていた俺はその光景を見て衝撃を受けた。
扉を開けたその先は辺り一面を埋め尽くす赤。赤。赤。
一人翔太はその真ん中で立ちすくんでいた。
宮「……なにが、あったの」
渡「……わかんない……わかんない!!気がついたらおれ、ここに立ってて……!!どうしよう、母さんも父さん妹も……俺が……?」
純血の海姫は禁断症状が激しい。それは俺も母親から聞いていた。
それ故に翔太は、禁断症状の弊害として自分の肉親を喰い殺したのである。
一族の末裔が、一族を壊滅まで追い込んだ。レアケースにもほどがある。
俺がもっと、翔太を支えていれたら。俺がもっと、俺が。
そんなたらればで脳内を埋め尽くす俺に出来るのは、膝から崩れ落ちた翔太の肩を支える事だけだった。
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mu-pon(プロフ) - コメント失礼します。初めまして、mu-ponと言います。いろんな事情があったんですね。この小説がとても面白くいつ更新かなと街に待っていました!今からも大変だと思いますが頑張って下さい!応援してます! (2020年6月30日 21時) (レス) id: df04c4729a (このIDを非表示/違反報告)
藤菜 - 初めまして!佐久間大好き!あべさくコンビも大好きです!この小説とても面白いですね!頑張ってください!応援してます! (2020年5月29日 10時) (レス) id: 624e77d1d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんと(プロフ) - リクエストお願いします!ふっかさんが敵に誘拐されるお話が読みたいです。めちゃくちゃ好きなタイプのお話なので、今後も作品楽しみにしています! (2020年5月25日 22時) (レス) id: 9203f39f18 (このIDを非表示/違反報告)
てんぷら(プロフ) - ゆり組のお話が読みたいです。2人の秘密に迫るというか、2人ならではの絆のお話しをお願いします。アバウトな感じですみません。。これからも応援しています。更新待ってます。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: d802e6ae3c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 藜さん» すみません!間違えました (2020年5月23日 23時) (レス) id: c9acd22823 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藜 | 作成日時:2020年5月16日 21時