■ ページ20
side* 燕子花
俺は孤独だった。
理由は簡単、この“能力”とやらのせい。
触った人間の傷を癒す。
聞いただけならこの界隈の人間なら喉から手が出るほど欲しい力だと思う。生まれたころからなぜか俺に備わっていたその能力は、瞬く間に近所で噂になった。酒場なのに俺の家では病人でごった返す景色は今でも覚えてる。両親は理解があったのか、結構大事に育ててもらって何とか普通に生きてけるかなって思ってた。
だけど、現実はそう甘くなかった。
常人とは違う紫色の目。両親からの反対を押し切って小さい頃からの憧れだった軍隊学校に入ったものの、やれ「化け物」だの「悪魔」だの挙句の果てには「死神」なんてあだ名までついて。
俺傷治せるのに死神ってマジ酷くない？
友達とかできるわけもなく一人で過ごしていた俺に変化が訪れたのは、軍隊学校三年になったばっかりの、桜がきれいに咲いていた日だった。
俺のクラスに転校生が来た。飛び級で来たっていうそいつは、怪我したらしい右手首に包帯を巻いていて、車椅子に座っていた。
しかもなぜか俺の隣の席になって。
阿「初めまして、阿部亮平です。」
深「深澤辰哉です。よろしく、」
差し出された右手を握って、やばいと思った時にはもう遅くて。
無意識に能力を使ってた。
でもそいつ、俺の目見てなんて言ったと思う？
阿「……綺麗な目、してるんですね」
深「え…？」
阿「あ、率直な感想を…え？！」
泣いたよね。初めて目が綺麗なんて言われてさ。
包帯取った時ももう、「え？！これ深澤君がやったの？！すご！！」みたいな感じで。
そっから仲良くなって、一緒に卒業して帝国軍に入った。
俺も能力の制御に慣れてきたし、阿部ちゃんも体調がよくなってきて昼でも歩けるようになって。やっと平穏な毎日になると思ってたら。
帰り道、後ろから来た数十人のやつらに思う存分殴られて俺は気を失った。
目が覚めた時には手足は拘束されてて。なんとなく見た感じでどこかの研究所だなってのは分かった。
朦朧とする景色の中で一人だけ、見たことのない黒ずくめの服を着て仮面をつけた男。
「おー、起きたか“死神”クン。」
深「なんで、その名前…」
「噂には聞いていたよ、君傷を治せるって。巷では珍しい“能力者”、でしょう？」
深「…」
「僕はその“能力者”を研究してるんだよ。君が栄えある一人目の実験体だ、喜んでほしいなあ。…深澤辰哉くん？」
首に迫る刃物に覚悟を決めた時、ドアが乱暴に開いた。
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mu-pon(プロフ) - コメント失礼します。初めまして、mu-ponと言います。いろんな事情があったんですね。この小説がとても面白くいつ更新かなと街に待っていました！今からも大変だと思いますが頑張って下さい！応援してます！ (2020年6月30日 21時) (
レス) id: df04c4729a (このIDを非表示/違反報告)
藤菜 - 初めまして！佐久間大好き！あべさくコンビも大好きです！この小説とても面白いですね！頑張ってください！応援してます！ (2020年5月29日 10時) (レス) id: 624e77d1d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんと(プロフ) - リクエストお願いします！ふっかさんが敵に誘拐されるお話が読みたいです。めちゃくちゃ好きなタイプのお話なので、今後も作品楽しみにしています！ (2020年5月25日 22時) (レス) id: 9203f39f18 (このIDを非表示/違反報告)
てんぷら(プロフ) - ゆり組のお話が読みたいです。2人の秘密に迫るというか、2人ならではの絆のお話しをお願いします。アバウトな感じですみません。。これからも応援しています。更新待ってます。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: d802e6ae3c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 藜さん» すみません！間違えました (2020年5月23日 23時) (レス) id: c9acd22823 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藜 | 作成日時：2020年5月16日 21時
