57.身勝手な贖罪へ ページ8
ジッと考えた結果、私は向かう事務所を書く書類に、“エンデヴァー事務所”と書いた。
「時雨……良いのか？」
「ええ、まあ、はい。
轟さんはどこに？」
轟さんはエンデヴァーのことが嫌いだ。だが、私にとってエンデヴァーは見習うべきことが多くある人間。
轟さんは来ないし、ナンバーワンの仕事が見れる。一石二鳥。
「……嫌いなのはそうだ。……だが、向き合おうと思った。
“家族”としては最低だが、“ヒーロー”としてのアイツはきっと、見習うことがあるだろうから。
俺はエンデヴァー事務所に行くことにする」
え、嘘。
私の見解は見事に外れた。……が、まぁ良いか。別に轟さんがいたって何か問題があるわけじゃなかろうし。
◆◆◆
お昼休み、約束通り轟さんに教室の外へ連れ出された。
向かった場所は、人気のない階段。
一度誤って個性を行使した生徒が壊した階段らしく、直りはしたものの新階段を作った後だったので、今は旧階段として残っているらしい。
「変な場所連れてきて悪ぃな」
「いえ……」
お腹は空いているので、早く話は終わらせてほしいという気持ちがある。
勿論、告白の期待はミリもしていない。個人的に告白には良い思い出が無いし。
「……ごめん」
こちらを振り返ったと思えば、頭を下げて、全く予想と反することを口にした。
「俺の勝手な勘違いで、時雨に危害を加えた。ヒーロー志望としてもそうだが、人間としてもどうかしてたと思う」
──ごめん。
「…………」
どう返すのが正解だろう。私の中で答えは決まっているけれど。
「……許す気は、正直……ないです」
私はすっと息を吸って、そう告げた。
「今朝からフレンドリーだったのは、私に少しでも許してもらおうとの思ってのことですか？」
「…………」
ああ、と小さく轟さんは言った。
「無理です、絶対」
ざっくりと、容赦なく告げる。
「“許してもらおう”なんて考えがある以上、本当に貴方と付き合いきれません」
轟さんが改心しようが、それは本当に身勝手なことだ。
私の心の傷が癒えるわけじゃない。
やられたことが取り消されるわけじゃない。
「……はあ……」
言葉だけで解決できる程、私は良い子じゃない。
……だから。
「顔、上げてください」
「……でも、」
「良いから」
轟さんは、顔を上げた。
「……もう一度言います。許す気はありません。
仲良くするつもりもありせんから｣
真っ直ぐとそう言い放ち、私は背を向けた。
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杏仁豆腐(プロフ) - まりもさん» すみません、今手直し中です！今までご指摘がなかったので「まあいいか！」で流してしまっていました……！ (1月10日 16時) (
レス) id: 83e1e19fb5 (このIDを非表示/違反報告)
まりも - 設定以外の名前変換が機能しておりませぬ… (1月10日 10時) (レス) @page1 id: 6f21c2cd01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅 | 作成日時：2023年12月19日 0時
