78.イケメンとファーストフード店 ページ29
「お母さん、時雨は家のこと知ってる」
「焦凍、話したの？」
「……ああ」
冷さんは眉を下げると、「ごめんなさい、嫌なところを」と申し訳なさそうに言った。
「いや、謝らなければならないのは私です。人の家庭事情を聞きたいという軽い気持ちで聞いてしまいました。
土足で踏み込んでしまい、申し訳ありません」
頭を下げると、「そう……」と残念そうに呟いた。
人の家庭事情に土足で踏み込んだのは私。巻き込まれたとはいえ、別に聞かなくたって良いことだった。
それに関しては、咎められても仕方ないと思っている。
「……折角来てくれたのに、悲しいお話ばかりはダメね。明るいお話しましょう？」
「だから、頭を上げて頂戴？」と言われたので、私は頭を上げた。
「っと、その、これはつまらない物ですが……！！」
保須事件のときに、轟さんたちにお見舞いの品として持って行ったドーナツを渡した。
「ありがとう」
中を見ると、「とても美味しそう……」と目を細めた。
……美人だ。そりゃあ、生まれる子供たち皆美人だなぁ……。
◆◆◆
お昼の時間になった為、私と轟さんは病院を出た。
「どこか食いに行くか？」
「はい。どこ行きます？」
「……行きてぇとこあるんだが、良いか？」
「？ はい」
轟さんが好きな蕎麦屋かな、と思っていた私。色々と浅はかだった。
轟さんが行きたいと言って連れて来られた場所は、なんと“マ〇ク”。休日のお昼だからか、ドライブスルーがとても混んでいる。
「え、えぇ……」
「……悪ぃ、来てみたかったんだ。行ったことねぇから」
ファーストフード店に入るイケメンなんて、本当に稀じゃないか？ こういうのは普通“ス〇バ”とかじゃないのか？
「行くか」
「あ、はい……」
中に入ると、結構空いていた。外はドライブスルーで混んでいるのだが……。
「轟さんって何食べ──轟さん？」
さっきまで隣にいた轟さんが、忽然と姿を消した。
キョロキョロと辺りを見渡すと、すぐに見つけることができた。
「轟さ、ん……」
まさかの、轟さんがいた場所はハッピーセットのおもちゃが飾ってある場所。
「お、時雨。これどうしたらもらえるんだ？」
「え、えぇっと……それは“ハッピーセット”っていうのを頼んだら……」
「俺、それ頼みてぇ」
マジか！？！？！？
私は笑うのを堪えながら、「はい」と返事をした。本当に待って。イケメンとハッピーセットってもう何事なんですか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杏仁豆腐(プロフ) - まりもさん» すみません、今手直し中です！今までご指摘がなかったので「まあいいか！」で流してしまっていました……！ (1月10日 16時) (
レス) id: 83e1e19fb5 (このIDを非表示/違反報告)
まりも - 設定以外の名前変換が機能しておりませぬ… (1月10日 10時) (レス) @page1 id: 6f21c2cd01 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅 | 作成日時：2023年12月19日 0時
