74.知る必要のないこと ページ25
「そうだろうな。だって本人は知らねェもん」
「え、そういうものって知ってるもんじゃないの？」
耳郎の疑問に、時雨は一度黙った。
「……ゼッテェ言うなよ」
「え？」
「Aには言うな。言ったらそれこそ壊れかねねェ」
さっきとは真逆に、真剣な顔でそう言った。
そして、轟へ視線を向ける。
「轟。お前の件でAが壊れなかったのは奇跡だ」
「……肩、焼いた時か」
「あァ」
時雨は一度沈黙を置いて、「詳しくは言えねェけど」と付け加えて言う。
「トラウマは掘り起こすな。お前らは「そんなの知らねェ！」って感じだろうが、知らねェ方が良い。
Aの為にも、だ」
ガシガシと頭を搔くと、なにか悔しそうに顔を歪めた。
「……時雨、俺はヒーローだ」
轟は、負けじとという風に時雨に言った。
だが。
「じゃあお前は……“見殺しにした親友の面影を見た”って言われてもそんなこと言えんのか」
轟は、思わず黙ってしまった。
「ッそれでも、」
「お前ら、何してる」
言い返そうとした轟の言葉を遮り、担任である相澤が声をかける。
「お、相澤センコーじゃん。ちッすちッす」
「ちょっと黙れ。時雨以外はばあさんの所行ってろ」
相澤は時雨以外の人間にそう呼びかけた。
全員なにか言いたげだったものの、先生が言ったことだからかリカバリーガールの所へ向かった。
人がいなくなると、「着いてこい」と相澤が時雨に言った。
「ここで話すのは合理的じゃない」
◆◆◆
相澤が連れて行った場所は“相談室”。
中は殺風景で、二つのソファーとそれに挟まれたテーブルしかない。
「座れ」
「はーい。テキトーで良いっしょ？」
「ああ」
時雨がソファーに座ると、その向かい側に相澤が座った。
「まあ、話の内容は薄々わかっているだろうが……」
「まァね。何聞きたいの？ 名前とか？」
「そうだな。まず名前を聞きたい」
「“時雨A”だ」
「……はあ」と呆れるようなため息を吐く相澤に、「マジだよ」と時雨は足を組む。
「信じてくんないんならもうウチに名前はないね」
「そうか。じゃあ次だ。何故、このタイミングで出てきた？」
問いかける相澤に、「……誘い出した癖に」と口角を上げる。
「分かって出てきたのか」
「そ。ま、出てくるタイミングが知りたいっつーなら気分だ。気分。代わって欲しいんなら言ってくりゃ出るよ」
「……一応聞くが、人に危害を加える気は無いよな？」
その質問に、少し間を開けた。
「……ねェな」
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杏仁豆腐(プロフ) - まりもさん» すみません、今手直し中です！今までご指摘がなかったので「まあいいか！」で流してしまっていました……！ (1月10日 16時) (
レス) id: 83e1e19fb5 (このIDを非表示/違反報告)
まりも - 設定以外の名前変換が機能しておりませぬ… (1月10日 10時) (レス) @page1 id: 6f21c2cd01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅 | 作成日時：2023年12月19日 0時
