62.全てを持って生まれてしまった男の子 ページ13
「俺、こういうの初めてだ」
「……はあ」
とても嬉しそうな顔を浮かべる轟さんに対し、私は何も言えなくなってしまった。
「“友達”と遊びに行くっつーこと……初めてで」
ああ、ワクワクするのか。成程。
……いや、友達と遊びに行くのが高校生で初めてとかじゃなく、人生で初めて、なんて有り得るのか？
「あの、轟さん」
「？」
「……轟さんって、なんでエンデヴァーさんのこと嫌いなんですか？
自己中だから、ってだけではないですよね？」
そう問いかけると、「あ、時雨には話してねぇか……」と何かを思い出しかのように呟く。
「……聞いてくれるか？」
「はあ……まあ、一応」
「おう。ありがとう」
轟さんは、淡々と語った。自分の家のことを。
力に執着する父、
壊れてしまった母、
自分を殺そうとした兄、
隔離されていた姉と兄。
聞いてるだけで気が滅入ってしまいそうだったが、私はその話をなんとか聞き終えた。
「…………」
エンデヴァーさんが十割十分悪いな。間違いない。
道理で、個性を聞いてきたわけだ。個性婚なんてしているし、個性で人を判断する……ような人なのだろう。多分。
「……なんかすみません」
「いや、いい。謝らなきゃいけねぇのは俺だ。ごめん」
そりゃ、個性が自分の力だと認められないわけだ。
私がそんな状況になったらと思うと……ゾッとする。考えるだけでももう無理だ。
「今思うと、本当にくだらねぇ。親父への反抗とか……本当に」
「そうですね。死ぬ程くだらないですね」
私は轟さんのやったことのサポートなんかせずに、ぐいぐい責める。
「最近、母さんの病院に行って、会った」
「へぇ」
「すげぇ謝られた。謝らなきゃいけねぇのは俺の筈なのに、「火傷を負わせてごめんね」って」
轟さんのお母さんは、別にエンデヴァーさんに全責任押し付けたって良い人なのに。それだけ罪深い人なのだろうか。
「体育祭の時……お前、控え室で泣いてただろ？」
「盗み聞きとか趣味最悪ですね」
「悪ぃ。話も全部聞いてた」
これ本当に殴ってもバチ当たらないと思うのは私だけなのか？
「家族と話してたんだろ？ ……ハッキリ言うと、羨ましかった。
ああやって言ってくれる家族がいんの、羨ましかった。 盗み聞きは悪ぃと思ってる」
「でも、聞いて後悔はしてない」と目を伏せながら言うものなので、私は何も言えなくなってしまった。
「……そーですか」
当たり障りの無い返事をして、私は窓の外を見上げた。
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杏仁豆腐(プロフ) - まりもさん» すみません、今手直し中です！今までご指摘がなかったので「まあいいか！」で流してしまっていました……！ (1月10日 16時) (
レス) id: 83e1e19fb5 (このIDを非表示/違反報告)
まりも - 設定以外の名前変換が機能しておりませぬ… (1月10日 10時) (レス) @page1 id: 6f21c2cd01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅 | 作成日時：2023年12月19日 0時
