感動の再会？ ページ12
最終目的地であるアパートが見えてきたあたり。
「珂波汰ぁ？なーにしてんの。こんなとこで」
それは、もう一度会いたくて仕方なかった人。
そして、もう会えなくなったはずの人。
「那由汰こそ、家にいろよ。危ねぇだろ！」
「散歩してただけだって。それよりソイツは？
だれ?」
何気ない言葉だった。
疑問に思う訳もなかった。私以外は。
それなりに親しくしてたという自負がある。
そんな相手に、覚えられていないこと。
なんかもうショックを通り越してしまった。
覚えてないの？と責め立てる気力もない。
仕事先の人だと珂波汰くんが説明する声が遠くに聞こえた。
それからの事はあまり記憶にない。
気がつけば自室前に着いていた。
「今日もありがとね。これ、弟さんが使って」
珂波汰くんにお礼を言い、
持っていたビニール傘をあげて自室に入る。
見間違いじゃなかった。
彼は確かに生きてた。
私のことは覚えていなかったけれど。
歓喜と哀しみで頭の中ぐっちゃぐちゃ。
その日は、よく眠れなかった。
翌朝、大嫌いな機械音で目を覚まし
寝不足を自覚しながら学校へ向かう。
自分で言うのはなんだけど
依織さんに通わせてもらっている立場だし
普段は、真面目な優等生を目指しているし
実際にそうだと思う。
ただ、この頭痛はダメだ。
耐えられそうにない。
昨日の衝撃に
ここまで影響されているとは。
自分でもびっくりだ。
「先生。少し体調が優れないので保健室に行きます」
「お、おう。お大事にな。」
数学教師の返答を受け、教室を後にする。
滅多に来ないようにしてるが
保健室はお気に入りの場所で
養護教諭とも懇意にしている。
扉をノックするも馴染みの優しい声はしない。
不在なのかな？
部屋に入って確認してみると誰もいなかった。
机の上に書き置きが残してあった。
出張中、と。
「まあ、いいや。ベット借りて寝てよ。」
独り言をこぼしながら、窓際のベットに横になる。
二年生の体育か、見てるだけでも暑苦しい。
校庭から聞こえる騒がしい音をBGMに睡眠を試みる。
少し寝ては目が覚めて、ぼーっとするのを繰り返していた。
はっきり言えば、暇だ。
体調も悪いのに変わらないが先程まではマシ。
ノック音が聞こえた直後に扉が開く音もした。
「あっ。あれ？先生、いないんですか？」
怪我人か、体調不良か。
普段なら絶対に関わらなかったけど
あいにく、暇を持て余していたから
カーテンを開けて、口を開いた。
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作者名：わんしゃん | 作成日時：2022年12月29日 23時
