世界はロックンロークで満ちている (ページ6)

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6．汚れた袖口の理由ページ6

翌日、早めにホテルをチェックアウトして会社へ向かう。

2日連続で同じ服なんてよくある話で、なんなら4日連続会社に泊まり込んだこともある岬さんという猛者もいるので特に誰も気に留めない。もちろん、私自身もそのひとりだ。

「有栖さん早いですね、おはようございますー」

「あれ、A。昨日定時で退社したのに服同じ？」

誰も気に留めない設定じゃなかったんかーいというノリツッコミは置いといて。

うちのチームのビジュアル担当、と室長がいう有栖さんは今日も通常運転でお美しい。確かもう40代に突入しているはずだけどまだまだうちのビジュアル担当の名は健在だ。あれ、私ここだと女性最年少なんだけどな。

「家の鍵なくしちゃってーー、ホテル泊まったんですよ。ああ、見っけた！」

手のひらサイズのちょっと不細工な文鳥のキーホルダーが付いている自宅の鍵は、デスクの下にころんと転がっていた。お前のせいで昨日は散々だったんだぞ、と文鳥を小突く。

「そそっかしいんだから。あ、A。ちょっとメール確認してみて」

急にメール？何だろう、と急いでPCを立ち上げてメールボックスを確認する。CCに有栖さん入りの岬さんからのメールだった。

《クライアントからのお願いで
　急きょ、今日の午後から打ち合わせ入りました。
　僕が参加できないので作詞担当のAと有栖さん
　同席していただけませんか？
　ちなみに楽曲は気に入ってくれたみたいだよ♡ 》

「相も変わらず岬は仕事が早いこと。これジェジュンの話でしょ？完成したの昨日って言ってなかった？」

「そうです、、ていうか今日って」

昨日の記憶が頭をよぎる。よりにもよって今日って。

「私昨日と服一緒なんですけど、、！」

岬さん私が昨日家帰れてないこと知ってますよね。っていうか岬さんもホテル行けって言いましたよね。いくらうちのチームがずぼらだって言ったってクライアントに会う時くらい綺麗な服着ますよ！

しかもそれがジェジュンさんで、隣人で、昨日会ってて、お金貸してくれて、恥ずかしいこと散々しちゃったあのジェジュンさんだなんて、さすがにしんどすぎやしませんか。

「そうねえ、なんか袖口汚れてるしそれで会うのはちょっと失礼よね」

「ダッシュで戻って来るんで半休使わせてください」

「うーん。あら、いい事思いついちゃった」

え、笑顔が怖いです有栖さん。