世界はロックンロークで満ちている (ページ4)

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4．理性は見栄でどうにでもなるページ4

「あの、、け、警察呼びます」

何よもう、うるさいなあ。こっちは睡眠時間2時間くらいでペンだこ激痛だし、クライアントに気に入ってもらえるか不安だし、とにかく眠いから後にしてよ。

「警察、、まずマネージャーだ、、」

「警察、、、？警察？待って、え？警察？」

「あの、ここ僕の家じゃないです、友達の家で、だから帰ってください」

目が覚めてギョッとしながら辺りを見渡すと、見慣れたうちのマンション、私の部屋番号。と、黒色のキャップを深くかぶったマスクの男。どう考えても私よりあんたの方が不審じゃない？

友達の家って、知らないし。隣人となんて接点ないっつーの。

「ちょっと、ここ、この隣！私の家なんです。疲れてて玄関で寝てたし部屋一個間違えてたけど、ここに住んでるんです」

「え、隣の人？」

「そうです」

何こいつ、と睡眠不足のせいで多少狂暴になってる私はマスク男を無視して自分の部屋に入ろうと、枕にしていた鞄をゴソゴソと漁る。

「ない、、」

まじかよ。何で？どこで？デスクに置いてきた？それとも道端に投げてきた？

腕時計を確認すると時刻は夜の10時過ぎ。管理会社なんか皆さんとっくに退勤してますよね。

ああ、どうしよう。ホテルでも行くしかないかなあ。

本当に、本当に眠い。

「あの、鍵、ないんですか」

さっきまで棒立ちだったくせに、急に声をかけて来た。何で話しかけてくんのよ。

「そうだけど。もうめちゃくちゃ疲れてて気絶して玄関で寝るくらい眠いのに鍵ないの！」

「じゃあホテルとか、、」

「財布も携帯も全部ないの。今日はもうここで寝るから。もういいでしょ、早く友達んち行きなさいよ」

本当は財布と携帯はあるけど、こんなダサい姿を見られて正直恥ずかしい気持ちが大きかった。だからせめてマスク男が友達の家に入ったらホテルにでもなんでも移動しようと思っていたのだ。眠いくせに、見栄だけは張ってしまう。

それでもじっと見つめてくるマスク男。

「もう何なのよ、、せっかくすっごいいい仕事終えて達成感100%で帰ってきたのに。鍵はないし、変なマスク男に絡まれるし最悪」

壁一枚挟んだ安らぎの空間で早く寝たい。何で鍵って付いてるんだろう。

ドアに額を付けて苛立ちと自分のアホさにやりきれなくなってドンドンとドアを殴っていたら。

「ちょっと待っててください」

マスク男が隣の部屋に入って行って、消えた。