3．即効性なんか期待してないの ページ3
ジェジュンさん。
韓国のアイドルで、東方神起で、5人組で、ソロ活動で、男の人。
圧倒的に情報が不足し過ぎている。まあ、必ずしも楽曲提供する相手について知る必要はないけどできればその人が歌ってこそ生きる歌になればうれしい。と、私は思うタイプだ。
さっきから全く動かない手は、自然とペンを放り投げてキーボードを叩いていた。
「ジェジュンさんって、3人組で活動してるんだ、、」
そこには、私が思っている人と全く別のキラキラした人間の情報と写真で溢れていた。
Youtubeで過去のMVやコンサートの映像もいくつか再生してみると、そこにいるのはアイドル？というよりはアーティストに近い男の人たちだった。
その中でもジェジュンさんは、空気を含んだ高めでかすれた声が印象的なパワーボーカルだった。
繊細そうなそのお顔とパワーボーカル、という言葉があまりマッチしていないのが逆にとても魅力的だ。マッチしていないのに、彼の声は彼にとても合っている。
「月島、お前仕事サボって何してんだ」
「室長、この案件ってクライアントがテーマ絞ってきたんですか？」
「ああ、それか。いや別にアルバムのバランス考えて、バラードでちょっと重めの歌詞がいいねってことになってただけだけど」
「じゃあ失恋じゃなくてもいいですよね。むしろすっごい重いのでもいいですよね」
「まあいいだろうけど。お前まで胃腸炎なんて洒落になんないから家には帰ってちゃんと飯食えよ」
彼の声に岬さんの曲、それに単純な失恋物なんかもったいない。
もっと、彼に似合う歌詞がある。
絶望と希望
そういう、人間の悲しみとか痛みとか孤独とか黒くて重くて苦しい触れたら何もかも一瞬で壊れてしまいそうな膿んだ傷に、そっと絆創膏を貼ってくれるみたいな。
そんな歌を彼に歌ってもらいたい。
そんな歌を歌う彼を見てみたい。
それから約2週間、私はペンを走らせた。
ペンは3本使い切った。
「さすがに重いですかね」
「大分ね。でも俺もわかるよ、ジェジュンさんにこういうの歌ってほしいって気持ち」
「、、、気に入ってくれればいいんですけど」
「そこをプレゼンするのは俺の仕事だから。よくやったな」
病室で頭をポンポンと撫でられる。ああ、よかった。これで安心して眠れる。
「岬さ、、ん、、お、、つかれさま、、、です、、」
「あ、ちょ、お前ここで寝るなっ、！」
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作者名：藤村さき | 作成日時：2018年9月22日 3時
