43. ページ43
いっつもそう
ヨコは話を聞いてないふりをしてちゃんと聞いてくれとる
だから今だって、年末の番組で言ったことをしれっと言う
ほんま、ずるいわ
そんなこと思ってるのも束の間
俺たちのキスを見た男は激昂した
『 なに言ってるんです?村上くんは僕のだ。貴方に渡すつもりはない 』
「 渡すも何も、今ヒナは俺の隣居んねんで?あほなこと言ってるんはそっちや 」
『 ……村上くん、僕たちあんなに愛し合ったじゃないですか 』
俺を見つめて男は言う
嫌や、聞きたくない
『 キスもした。村上くんの舌はあつくて溶けそうで、ふわふわしてた。それから、胸も弄りましたね。嫌々言いながら声が漏れる村上くんは最高に可愛い。』
やめろ、やめてくれ
思い出したくないんや
『 なんと言ってもとろとろに溶けた後ろ。僕を感じてくれていた証拠ですよ?あまりにも声が甘くて、僕の脳に響いて、ずっと忘れられないんです 』
隣ではヨコが黙って聞いていた
引かれたかもしれない、と
こんな汚れた俺に怒ったかもしれない、と
不安が募る
表情は見えなかったが、淡々と隣の彼は言った
「 じゃあ証拠見せてみいや。今ここで。どうせ写真とか動画とか撮ってんねやろ? 」
男はそれを聞くと嬉嬉として携帯を出した
『 それはもちろん。見ます?僕たちの愛の結晶を 』
嫌、ヨコにだけは、ヨコにだけは見られたくない
「 嫌、嫌や、見んとって…ヨコ、ヨコ!! 」
俺の言葉を無視してヨコは携帯から流れる聞きたくもない俺の声と男の声を、欲に塗れた行為を見つめた
聞きたくなかった、ヨコから何も
もう、終わりや
「………ありがとう。見せてくれて 」
110人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なるせ | 作成日時:2017年10月15日 19時