恋募 1 ページ2
恋慕
メイド「どうかされましたか?」
貴「！…いえ、何もありません」
王貴界に位置するこの場所で、ローズレイ家の次女であるユズが窓の外をジーッと見つめていた。
ローズレイ家を恨む人物によって18歳になった時に発動する時間を止める荊の呪いをかけられてしまった。しかし、ユズは魔力自体を持っていない。呪いにはかかっていない。
貴「そろそろ、姉様が帰ってくる時間ですね」
壁にかかっている時計で時刻を確認すると、そろそろ姉であるシャーロットが帰ってくる時間だ。
ユズは椅子から立ち、小脇に抱えた書物を傍にあったテーブルにそっと置き、部屋のドアに手をかけた。
メイド「ユズ様、お体が冷えてしまいます」
貴「姉様を迎えに行くだけです、ありがとう」
ユズはメイドに止められたが、姉であるシャーロットを迎えに行くだけだと告げ、部屋を後にした。
長い廊下を歩き、階段をゆっくりと降りている。あまり、外に出られないユズにとって姉を迎えに行くことは外の景色を見るためでもある。
執事「ユズ様、これ以上は…」
貴「大丈夫、姉様を迎えに行くだけです」
ユズは執事達を押し切り何とか玄関まで到着した。すこし息が上がってしまった。呼吸を整えてドアを開ける。
貴「…少し、行ってきます」
ドアを開けると、見事な薔薇がユズを出迎えた。赤色、青色、黄色い薔薇。色とりどりの綺麗な薔薇が咲き誇っている。
貴「…綺麗…」
薔薇の道を歩き、家から段々と離れている。流石の執事達も心配したのか後ろから追いかけてきている。
貴「!…ﾌﾌｯ」
ユズは後ろから執事達が追いかけていると知ると、頑張って手足を動かし走っている。ドレスの裾をつかみ、薔薇の道を進んでいる。
貴「ﾊｧﾊｧ…久しぶりに走りました…」
シャーロット「!?ユズ!何故、外に出ている!」
しゃがみこんで息を整えていると、碧の野薔薇団長であり、実姉であるシャーロット・ローズレイが現れた。
貴「姉様をお迎えに来ました」
シャーロット「来なくても大丈夫だと伝えただろう…」
シャーロットは何度も妹であるユズに外まで迎えに来なくてもいいと伝えているが、ユズは全く聞き耳をもたない。
貴「私も、もうすぐ20になる女性です。一人でなんでもできなくてはいけません」
シャ「分かった、話なら聞いてやる」
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作者名：唐墨 | 作成日時：2022年2月27日 1時
