拾弐 ページ13
日も暮れて涼風が忍び込む夕暮れ時、俺たちは再び空聖神社へと集合した。
他のメンバーが来ると、空蝉は自らも俺たちと同じであると打ち明けた。
そして、俺らと共にこの神社から出ることも。
「…で、どうやって出るんだ?」
マサイがそう聞くと、空蝉は人の形をした紙を取り出した。
「これは『形代』って言って、ここに名前を書いて魂を込めるとこの形代が身代わりになってくれるんだ。
これを咥えて神社を出ると、形代が自分たちに代わって夏を繰り返してくれる。
つまりシルクたちは日常へ帰れるってわけ。」
そう言うと彼女はそれぞれに1枚ずつ形代を配っていった。
そして俺たちは自らの本名を形代に記入する。
「その形代に息を吹きかけて魂を込めるの。
その後にそれを咥える。咥えたらそこから鳥居をくぐるまでは絶対に言葉を発してはいけないからね。
チャンスは一度だけ。形代が機能するのはたった1回なの。」
「空蝉、お前も帰るんだろ?
ほら、手。」
そう言って俺は彼女に自分の手を差し出す。
彼岸に近づきすぎた彼女を戻すには、此岸の人間である俺が引き上げるしかないらしい。
それが彼女の願いだ。
どうなるのかはわからないが、やるしかない。
空蝉は少しだけ照れくさそうにしながら俺の手を掴む。
その手はほんの少しだけ暖かかった。
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りんてん - え、もう感動して涙がポロポロ...。 泣けました!素晴らしいです!! (2019年10月25日 23時) (レス) id: e2668604a6 (このIDを非表示/違反報告)
どこか村のだれかさん - 気づいたら読み終わってました!面白かったです! (2019年9月9日 0時) (レス) id: 3706e8b566 (このIDを非表示/違反報告)
バニレ - とても面白かったです。更新待ってます。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 527198f7e6 (このIDを非表示/違反報告)
www - イエ―イ!面白いよ!相変わらず!w (2019年8月26日 17時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:來(らい) | 作成日時:2019年8月25日 21時