肆 ページ5
5日後。少女に言われた通り、俺たちは再びあの神社へと向かった。
ぺけとマサイは予定が合わなかったため、今日は俺とモトキの2人。
『空聖神社』と書かれた鳥居をくぐり、彼女を探す。
「…ほんとに来たんだ。」
声のした方を向くと、この前と変わらない様子の少女がいた。
「俺らだって何も知らないまま終われはしないからな。」
そう俺が答えると、彼女は呆れたように溜め息をついた。
「そんなに気になるかなぁ。
まぁいいや、教えてあげる。けど、三つだけ約束して。
ひとつめ、此処の事は来たことがない人たちには話してはいけない。
ふたつめ、此処の物は一切持ち帰ってはいけない。
みっつめ、
この神社では、絶対に『おねがいごと』をしてはいけない。」
神社なのにお願いごとをしてはいけないなんて珍しいとは思ったものの、彼女が提示した条件を呑み、この神社のことを教えてもらった。
この神社は『
ずいぶん昔から神社が使われていないこと。
神主が居なくなったこの神社を少女が1人で管理していること。
「…私が教えられることはこれくらいだよ。」
「なるほど、ありがとう。通りでこんな場所があったなんて俺らが知らないわけだ。」
「そうだね。この場所に人が来るなんて滅多にない。私も久しぶりに会ったよ。」
そう呟いた彼女は寂しげに遠くを見つめ、目を細めて笑う。
いま思えば、この時に俺は彼女に惹かれてしまったのかもしれない。
世界から隔離されたようなこの場所でたった一人、誰も訪れることのない静寂に存在する彼女の儚い笑顔に、自らの鼓動が大きく感じる。
「…君の名前を教えてくれよ。」
気がつけばそんな事を口走っていた。
何故だか彼女のことが気になって。
すると彼女は少しだけ目を見開き、息を飲んだ。
沈黙の後、少女は口を開く。
「空蝉。そう呼んで。」
「そっか。なぁ空蝉、またこの場所に来てもいいか？」
「………好きにすれば。」
そう言ってそっぽを向いてしまった彼女の頬は、心なしか少しだけ朱色に見えた。
それからというもの、夏の間俺は度々彼女の元を訪れた。
3人のうちの誰かだったり、4人全員だったり、はたまた俺一人だったり。
神社に行く度に彼女は飽きれた様子で、でも少しだけ嬉しそうに俺たちと接してくれた。
そして俺はそんな彼女と過ごす度に、少しずつ想いが増していく。
夏が終わったら、この気持ちを伝えようと思った。
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りんてん - え、もう感動して涙がポロポロ...。 泣けました！素晴らしいです！！ (2019年10月25日 23時) (
レス) id: e2668604a6 (このIDを非表示/違反報告)
どこか村のだれかさん - 気づいたら読み終わってました！面白かったです！ (2019年9月9日 0時) (レス) id: 3706e8b566 (このIDを非表示/違反報告)
バニレ - とても面白かったです。更新待ってます。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 527198f7e6 (このIDを非表示/違反報告)
www - イエ―イ！面白いよ！相変わらず！ｗ (2019年8月26日 17時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：來（らい） | 作成日時：2019年8月25日 21時
