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17話 ページ20

《モトキside》


俺が席に戻ってくると、先程までとはうって変わってなぜか泣きだしそうな顔をしているAちゃんがいた。


問いかけてもまた『大丈夫』と言って、はぐらかそうとする彼女の言葉を遮って事情を聞く。


そうすることでやっとAちゃんが折れて、「見て」とスマホの画面を差し出す。



画面には天月さんのツイート。

『ご飯誘ったのにタピオカ要求してくる。意味わかんない。』という文章と共に某女性歌い手とのLINE画面のスクショが2枚。



LINEでは天月さんがその歌い手さんをご飯に誘い、タピオカを奢ってくれるなら行くという条件を出されている。


きっとファンから見たら微笑ましい様子の一つなのだろう。


しかし、確かAちゃんは以前天月さんを誘って断られた経験があったはずだ。



…これはつらすぎる。



「えー普通に辛いんだけどー。
こんなことあります？」


言葉とは裏腹に、彼女は笑う。

そんな彼女の様子は見ているだけで辛かった。



笑わないでよ。

泣いていいんだよ。

怒っていいんだよ。

…頼って、いいんだよ。



きっとそんな言葉は彼女には届かない。

『笑顔』というダイヤモンドより硬い仮面を壊すには、そんな言葉じゃ駄目なんだ。


この仮面は、天月さんじゃないと壊せない。

でも仮面を作らせているのも、天月さん。



「…ごめんな。」



俺の口から零れたのは、謝罪の言葉。


これが、俺にできる精一杯だった。


「なんで、モトキくんが謝るのさ！

辛いけど、私は大丈夫だよ。」



それでも『大丈夫』と笑う君。



ねぇ、もし俺が君の好きな人だったら、その仮面は外せていた？



「Aちゃん。」


「何？」


「うち、来ない？」

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