向日葵が2束 ページ2
「おい、起きろ。」
寝そべっていた体を、グイグイと押される。
反射的に起きたくなくて「ん〜」なんてだらしない声で応答する。
「ベポが気合い入れて準備し始めたんだ、そろそろ公演が始まる頃だろ。とっとと起きろ。」
準備が完了したのか、僕達のやり取りに気づいたベポがゆっくりと体を引き上げて座る形にしてくれる。
感謝の意味も込めて頬あたりを ウリウリ と撫でてやれば満足そうな反応をされる。
「朝から何も食ってないんだろ、それでも飲んで胃を落ち着かせておけ。」
「ありがとロー」
目が覚めてから1度も胃に固形物を入れずに2度目の眠りに入ってしまった為か、すっかり食事のことを忘れていた。
額に当てられたひんやりと冷たい水を受け取って、ゴクリと1口。
渇ききってカラカラだった喉が水分を吸収したことにより、眠気もゆっくりと落ち着いてきた。
ゆっくりと立ち上がり、ローと同じように壁に背を預けるようにして会場を見回す。
それと同時に会場が暗転する。
観客のざわめきが増していく。
「新時代はこの未来だ。世界中全部変えてしまえば。」
＿変えてしまえば
待ってましたと言わんばかりの大きな歓声に、7色のライトアップ。
様々な演出に目を奪われる。
サビに近づけば、演出とともに着込んでいたパーカーのフードを外しながら着脱する。
ピンクの羽がついた黄色い球体が現れる。
「…」
手を器のような形にして覗いてみる。
球体の中では、彼女の姿が映されている。
笑顔で、踊っている。
「みんなやっと会えたね！ウタだよ」
「…ウタ」
彼女の姿を見ると同時に、湧き出てくる感情。
元気でよかった。
笑顔を見れてよかった。
生きていてくれてよかった。
けれど、心の中では分かっている。
ウタには、会うべきじゃないと。
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作者名：パチュリー | 作成日時：2024年2月24日 4時
