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「なぜ、同種の血を……!」
「俺はアンタみたいな始祖同士に始まり代々引き継がれていく高貴な吸血鬼とは違うんだよ。
人間と始祖の吸血鬼が子をなし、その子供も人間と子をなす。吸血鬼の血と人間の血が混ざって普通の吸血鬼なら起こりえないことが起こる。
俺は、同種の血しか飲むことができない。俺の弟は人間の血を飲むことが出来るだけまだマシだろう、代償は大きいがな。」
男の口から紡がれる情報量に目を眩ます。なんだって?始祖の吸血鬼?何を言っているのか全くわからない。
「亡霊の存在を聞き、村で起こる殺人事件と照らし合わせてもしかしたら、と思ったんだが予想通りだったわけだ。
亡霊の正体は吸血鬼。まさか、女だとは思わなかったけどな。」
「……それで?話が見えないんだけど。私を一体どうしたいの?」
小さく震え声を相手に向けると、群青色の瞳がギラリ、と獣じみた瞳に変わる。私の手をそっと取ると小指に口付けた。
「俺と一緒に来てもらう。……亡霊がこんなに美しいとは思ってもいなかった。俺と一緒に、永遠の中で一緒に過ごそう。お前のためなら何だってくれてやる。」
その言葉を聞いて、皮肉げにハ、と笑う。
「私が望むものは死。何年も何年も吸血鬼が死ぬ方法を探してきた。だから永遠にあなたといることは出来ないの。」
「なら俺も一緒に探してやるよ。お前の死に場所は俺の腕の中にしろ。美しく着飾って、血を吸い尽くして、そん時に看取ってやる。」
「……交渉成立ね」
観念したように呟くと彼はまるで子供のように、無邪気に微笑んだ。本当に嬉しい、とでもいうように。
「まずは世界1周でもするか?お前となら、どこへ行ってもきっと楽しいだろうからな。」
「いいけど、約束は忘れないでよ。」
「分かってる、なんならどこぞの神にでも誓ってやるよ。」
彼は私の黒いフードを両手で優しく下ろす。まるで、結婚式のベールを下ろすかのように、優しい手つきで。
「……そういえば名前、聞いてなかったわね。私は、A。あなたは?」
「兄者。これから、よろしくなA。」
兄者。彼はまるで鳥のように自由だ。この息苦しかった世界から、いともたやすく私を連れ出してしまった。きっともう、巣へは戻れない。それでもきっと大丈夫。彼が私の手を繋いでいてくれるから。その手で、私に救いという名の死を与えてくれる、神様なのだから。
END……?
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作者名:造 | 作成日時:2018年5月18日 6時