群青色に染まる。/兄 ページ8
※吸血鬼設定
この地に生まれ落ちてから、もう何年経っただろうか？
物心ついた時には全てを理解していた。私は普通ではないことも、人間が普段食べるものを私の胃が受け付けないことも、何もかも。
そう理解してからは全てが早かった。食事の仕方を覚えた。この不条理な世界で生きていくための、身の振る舞い方というものを覚えた。そして、好きでもないこの体の、能力の引き出し方も、覚えた。
そう過ごしてきて何年経ったのか、私は記憶していない。長い年月を過ごしてきたようにも思えるけれどそんなこと私にとっては些細なことであり、生に執着する人間とは打って変わって、私は死に執着してしまっていた。
どうしたら死ぬ事が出来るのか。銀の弾丸？効果はまるでナシ。陽の光？ダメ、人間と同様、皮膚がジリジリと焼けていくだけ。
思いつくがままに何度も何度も死のうとして何十年。もはや全てがどうでもよかった。いつも通り森の中にある住処から村に降りて食事を済ませ、いつも通り住処に帰る。だから、目の前にこの男が立ちはだかろうと、私からしたら知ったことではなかった。
さてどうしたものかと考え、小さく首を傾げると頭の上の黒いフードが少し揺れた。
「……どちらさま？私に何か御用？」
「お前が森に住む亡霊か？」
男の言葉を聞いて、驚く。まさか住民達からそんな風に呼ばれていたとは。
「だったらなんだっていうの。トドメでも、刺しに来た？」
目の前の男はかけていたサングラスをゆっくりとした動作で外すと、隙間からこの憎たらしい快晴の色をそのまま絵の具で垂らしたような、群青色の瞳が覗かせた。
ふ、と笑ったかと思うと、彼が目の前から消える。
「……！？」
気づけば彼に後ろ手をまとめあげられていた。
「ンだよ、亡霊って言ったってこんなモンか？まあいい、大人しくしてろよ」
好き勝手言葉を履いたあと、生暖かい、ざらりとした感触がラインに沿うように肩を這う。ぞわ、と鳥肌が立つと同時に頭の中で警報が鳴り響く。もしかして、こいつは。そう思ったと同時にツプリ、と牙を立てられた。喉から引きつった声があがる。
反響して広がる鳥の鳴き声、遠くから聞こえる水の流れる音、木々の囁く声、全てが響く森の中でごくんと血を飲む音が不気味に響き渡る。
「やっぱりな。アンタ、吸血鬼だろ」
満足したのか口元を粗雑に袖口で拭い、目を細める男。その隙に相手を押し退け、距離を取って睨みつける。男は気にしていないようで淡々と話し続けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：造 | 作成日時：2018年5月18日 6時
